Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"ザ・スイッチ(Freaky)"(2020) Review!

相手の気持ちになると分かることがある。

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公式トレイラー


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MOVIE MARBIEで記事書きました。本当は劇場で観たんですがレビュー書くのサボってて、配信が始まるのと記事書くこのタイミングでようやく重い腰を上げたわけです。まーた悪い癖が……

moviemarbie.com

 

クリストファー・ランドンは本当に良い監督ですね。長編デビュー作の"バーニング・パームズ"(あ、ロザムンド・パイク出てるのか!)と長編2作目の"パラノーマル・アクティビティ/呪いの印"は観ていませんが、その次の"ゾンビ―ワールドへようこそ"(邦題アレだけど)、"ハッピー・デス・デイ""ハッピー・デス・デイ 2U"はどれもお気に入りです。特に"ハピデス"シリーズはオールタイムベストのリストに加えたいくらい。ちなみに、"ゾンビ―ワールドへようこそ"の主演は、"レディ・プレイヤー1"でも主演してるタイ・シェリダンです。

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第3弾も始動してるらしいですが、最近特に何の噂も流れてきません。IMDbにも載ってないし。仮タイトルは"Happy Death Day to US"らしいですが、2が"ハッピー・デス・デイ 2U"だったので、第3弾もそのままハッピー・バースデイの歌にかけて"Happy Death Day Dear Tree"にしてほしいですね。歌詞の流れにも沿ってるし、歌詞通りタイトル後半は「ディア・誰々」の形になるし、ツリーの名前は3(three)と韻踏んでますからね。カンペキでしょ? 聞いた話では、本作と"ハピデス"シリーズは同じ世界観を共有しているという設定になったとか。何それアツい。早く新作作ってや!

 

 

あらすじ

13日の金曜日に、冴えない女子高生のミリーは巷を騒がせている殺人鬼、ブッチャーに襲われる。怪しい短剣で刺されたはずのミリーが気がつくと、何とブッチャーの姿に変わっていた。24時間以内に同じ短剣でブッチャーを刺し返さなければ、一生このままの姿で生きなければならない。慌てふためくミリーをよそに、ミリーの姿になったブッチャーは凶行を重ねていき……。

 

スタッフ・キャスト

監督は前述の通りクリストファー・ランドン。

ミリー役を"明日への地図を探して"のキャスリン・ニュートン、ブッチャー役を"ブルータル・ジャスティス"ヴィンス・ヴォーンが演じた。他。

 

 

キャスリン・ニュートンは多くの人が"名探偵ピカチュウ"のヒロインと認識してると思いますが、今後はAmazon Originalの"明日への地図を探して"のヒロインとして認識されると良いなー。いや、今後は"アントマン"シリーズ最新作の"Ant-Man and The Wasp: Quantumania"で認知されるかな。アントマンことスコット・ラングの娘、キャシー役ですからね。最近ループものが多いですが、その中でもこれは出色の出来でした。個人的には"パーム・スプリングス"以上の傑作だと思います。"ハピデス"と並べても良いくらい気に入ったけど、こっちにはジェシカ・ロースが出てないので"ハピデス"に軍配が上がりますね(笑)。だってジェシカ・ロースが演じたツリー本当に最高ですからね。その年観た映画のキャラの中でも1位取れるレベル。ループものの金字塔である"恋はデジャ・ブ"ビル・マーレイのキャラを正しく継承したとも言えるでしょうし。しかし"明日への地図を探して"観てから結構経ったのに、まだレビューまとまってません(笑)。ちょっと待っててね。

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やっぱ、入れ替わりものはそれだけで面白いですよね。"ハピデス"はループものだったし、ランドンはジャンル選びが良いですね。その時点ですでに勝ちが確定してますが、そこにあぐらをかかずに楽しい映画を作ってくれるのが素晴らしい。

 

初っ端から高校生4人が無惨にブッチャーに殺されます。ビンを口に突っ込まれた上そのまま割られ首から破片が突き出たり、折られたテニスラケットを頭の左右にぶっ刺されたり。ここでもう"ハピデス"以上のゴアが拝めますね。プラス、本作は言葉遣いが強烈です。ミリーの友だちでゲイのジョシュが一番言ってますが、下ネタをボカさずモロにバンバン口にします。「ヴァギタリアン」なんて言葉も出てきます(笑。レズビアンの俗称で由来はお察し。っていうか、本当にある単語なのか!) この言葉遣いのせいでR15+になったんじゃないのと思うほど。"ハピデス"にもゲイのキャラがチラッと出てきましたが、実はクリストファー・ランドン自身がゲイなんですな。今回はそこらへんのネタがこれでもかというほど詰め込まれてます。ジョシュが成り行きで「実はストレートなんだ!」と嘘だけど逆カミングアウトするギャグはかなりフレッシュでした。

 

"ハピデス"の方がコメディ度高めで、本作の方がホラー度高めではあるんですが、ちょくちょく可愛くもおかしいシーンが出てきます。ミリーを脅かしてくるバカ男子(好き)、ミリーと親友ナイラ&ジョシュとの決めポーズ(アメリカ映画でよくある、手を色んなパシパシするあいさつ。普通の握手とはだいぶ違うけど、ハンドシェイクと呼ぶらしいですな)、ミリー・ブッチャー(ミリー姿のブッチャー)の入れ替わり日の朝のポカン顔、ブッチャー・ミリー(ブッチャー姿のミリー)の乙女具合など。特に入れ替わり後の演技は細かくて、ブッチャー(めんどくさいのでトランスジェンダーの人を心の性別で捉えるのと同じで心の中の人物名で呼びます)はドアを肩をぶつけながら荒っぽく開けるし、獲物にすぎない周りの人物とは会話もしません。ミリーはブッチャー姿なのに、シャワー後は上半身まで隠すようにバスタオルを巻きます。立ちションの快楽に目覚めるシーンは本当に笑いました。左右にペチペチ振ったりして。あの個室エラいことになってるでしょうね(笑)。吹き替えで観るとブッチャーは男言葉、ミリーは女言葉で喋るので、演技がすごく自然に入ってきました。

 

後、強調されてるのはお互いの身体能力ですよね。ミリーは多分ポカポカやってるつもりが、ナイラとジョシュをボコボコにします。好きなブッカーをちょっと押したつもりが気絶させちゃいますし。ブッチャーは逆に弱くなり、人ひとり殺すのにも苦労します。姿はミリーなので、相手が数人いると、それが男子高校生でも結構不利に見えますね。性的に襲われているような絵面になりますし。

 

段々と、2人は異性の体がそんなに悪くないことに気づいていきます。ミリーはイジメ男子にやり返す力を手に入れたし、いつもの自分とは違うからなのか少しずつ積極性を増していきます。ブッカーともちゃんと話せたしね。夫(ミリーの父)を亡くしてアル中になったミリーの母とも、お互い姿を見せないことにより心の会話ができましたし。ブッチャーは何故か最初から完璧メイクで登校してましたけどね(笑)。ブッカーを誘う時の、見つめて、目線を落として、また見つめるという熱視線もバッチリだったし。女演技する時はめちゃあざとくなるのもバカバカしいギャグで良い。特にミリーの方が、この入れ替わりで皮肉にも色々成長していきますね。そして、若いのに非常に良くできた心までイケメンのブッカーはブッチャー姿のミリーとぶっちゅーします(韻踏みすぎ)。この態度は見習わないといけませんな。Heiroも昔、酔った親戚のおじさんにほっぺにぶっちゅーされたけど、そんなに嫌じゃなかったよ(笑)。唇奪われないで良かったけど。

 

興味深いのは、ジョシュがゲイのレイプ野郎に襲われそうになること。別にLGBTQの人を一緒くたに良い人として扱ってないんですな。障害者は聖人のように描かれることが多くありますが、クリストファー・ランドンはそういうことはしてない。善人もいればそうでない人もいる。フェアですね。

 

「入れ替わりのタイムリミットに間に合わなかったと見せかけて、ミリーはブッカーのアドバイスを聞いて時計を進めてたので、後5分残ってる!」って展開は読めるしありがちですが、やはりアツい。無事ミリーは自分の体を取り戻し、ブッチャーは死んでめでたしめでたし……と思ったら、最後にもう一度ミリーを殺しに来るという。サービス盛り盛り。女性の顔面にもパンチ叩き込む非情なブッチャーに、入れ替わりでその痛みを学んだ股間キックをお見舞いし、クールなエンディング。いやー最高ですね。股間キックって見た目も間抜けになる上、象徴的にも有害な男性性をこれ以上なく痛快な形でぶっ壊してくれる良いアクションですよね(他人事じゃないが)。

 

クリストファー・ランドンの撮影中の新作は"We Have a Ghost"というタイトルで、幽霊もののようです。ホラーコメディと予想しますが。"ブラック・ウィドウ"のデヴィッド・ハーバーや"ファルコン&ウィンター・ソルジャー"アンソニー・マッキーなどが出るみたい。これまでのように、主人公は10代とか20代ではないんですかね。まあおそらく、完成したら日本公開も期待できるでしょう。また傑作を作ってくれ!

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★★★★★★★★  8/10

Rotten Tomatoes  83%,80%

IMDb  6.3

ブッチャー姿のミリーのダンスは笑ったけど、ヴィンス・ヴォーン腰やらないか心配した。