Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"レディ・プレイヤー1(Ready Player One)"(2018)

ポップカルチャーは現実世界の「オアシス」

(※一体誰が観てんだって話ですが、"変態愛 インセクト"のネタバレをしています)

 

公式トレイラー


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3年ぶりに観直しました。やっぱ超面白い。内容が深いかと言えばまあそんなことないのかもしれませんけども(笑)、でも語りがいがある映画なのは間違いないわな。
 
 
あらすじ
2045年オハイオ州コロンバス。人々は暗い現実から目を背け、「OASIS(オアシス)」というヴァーチャルリアリティゲームの中に逃避していた。OASISを創造したジェームズ・ハリデーの遺言により、ゲーム中に隠されたイースターエッグ(いわゆる隠し要素)を見つけた者は、彼の全財産5000億ドルとOASISの所有権を得ることができる。ハリデーとOASISを愛する、若きゲームプレイヤーのウェイドとその仲間たちは、金のためにOASISを牛耳ろうとする大企業IOIに立ち向かっていく。
 
スタッフ・キャスト
監督は言わずと知れたオタクの神、スティーヴン・スピルバーグ
主役は"X-MEN: アポカリプス"のタイ・シェリダン。脇役に"サラブレッド"のオリヴィア・クック、"ベイビーティース"ベン・メンデルソーンなど。他。
 
 
本作はやはり問題作ですねえ。つっても「オリヴィア・クック問題」作ですが(笑)。オリヴィア・クック扮するサマンサの顔には大きな痣があって、サマンサ自身はそれを気にして前髪で隠してるんですが、ウェイドに「気にすることない」って言われて隠さなくなるんですよ。うん。ただでさえ本作はオタクたちの話でありながら美男美女ばっかだからすごい今更なんですけど、サマンサ自身が気になると言うならしょうがないんですけど、元から客観的には大した問題に見えないと思うんですよ。オリヴィア・クックの可愛さは1ミリも失われてないからね。描写の説得力が弱い。こういう映画の登場人物の美に関する欺瞞って色んなとこで見ますよね。「醜いという体(てい)で」みたいな。だから何だということもないんですけど。見ててちょっとノイズになるだけです。特にオリヴィア・クックの場合は"ぼくとアールと彼女のさよなら"でも同じような問題がありますからね(笑)。別にオリヴィア・クックに責任はないですが。サマンサのフルネームはサマンサ・イヴリン・クック(Samantha Evelyn Cook)で、スペルはちょっと違うけどオリヴィア・クック(Olivia Cooke)自身と苗字が一致してるのが面白い。

 

主役のタイ・シェリダンは、"ハッピー・デス・デイ"シリーズでお馴染み、クリストファー・ランドンの"ゾンビーワールドへようこそ"(「ゾンビワールド」ではない)でも主役やってましたね。素朴ながら中々精悍な顔をした若手俳優で、だからこそオタク役でもハマってますね。ただのイケメンじゃないからね。顔が似てる有望若手俳優が他に1人います。そう、"聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア"などのバリー・コーガンね。勝手に「アメリカのタイ・シェリダン、アイルランドバリー・コーガン」と対にして呼んでます。「西の服部、東の工藤」と同じですよ。何となく韻も踏んでるしな。せやかて工藤、"聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア"って邦題どうにかならなかったんか。前半か後半だけでよろしおま。2回同じこと言わんでもな……ってこれ、"IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。"と同じトリックなんちゃうか。工藤、分かってしもたで。この名探偵のHeiroには分かってしもたんでんがな。でおまんがな。
主人公のウェイドが大好きな、本作の中のオタクの神、ハリデーを演じたのはマーク・ライランススピルバーグとは以前"ブリッジ・オブ・スパイ"で一緒に仕事してますが、飄々としたソ連のスパイ役を演じてて良かったですね。最近やっと有名になってきた感のある人ですが、昔出てた"変態愛 インセクト"って映画が印象的でした。何でって、「インセクト」じゃなくて「インセスト」やんと……まあ良いやこの話は。クリスティン・スコット・トーマスとか出てましたよ。
ハリデーの親友モロー役はエドガー・ライト作品や"ミッション: インポッシブル"シリーズでお馴染みのサイモン・ペッグ。オタク役は任せとけってな人ですが、本作ではマーク・ライランス演じるハリデーの方がザ(ジ?)・オタクでしたね。さすが名優。
悪役、ノーラン・ソレントを演じるのはベン・メンデルソーン。悪役のイメージが強い人なんで"ベイビーティース"で普通の父親を演じてるのが新鮮でしたが、本作の役どころも笑えます。OASISに愛がなく、金のことしか考えていないヤツで、悪役なのは確かですがパスワードをその辺に誰にでも見えるように放置していたり、股間を蹴られて崩れ落ちる爆笑シーンを提供してくれたり、何か憎めないキャラです。このゲームに興味ない感じ、大抵の人の親もそうなのでは? Heiroも子どもの頃、何時間もスマブラやってて、それを親に冷めた目で見られていたものです。妙に懐かしい感覚が蘇って嬉しかった。だがお前はソレントへ帰れ。敵の名前がノーランなので、だから本作はアンチ・クリストファー・ノーラン的な「考えるな! 感じろ!」イズムなのかと思ったら、そういや"TENET テネット"も同じイズムでしたね。
 
本作はイースターエッグを探す物語ですが、イースターエッグ的出演をしているキャストもいて面白いです。序盤のハリデーの遺言のとこで、セリフもなくただの小学生A&Bとして顔を見せるマッケナ・グレイスとルル・ウィルソン。マッケナ・グレイスちゃんは"gifted/ギフテッド"で天才児を演じ、キャプテン・アメリカことクリス・エヴァンスと共演してましたね。MCU"キャプテン・マーベル"ではブリー・ラーソン演じるキャロル・ダンヴァースの少女時代も演じていたし、"アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル"ではマーゴット・ロビー演じるトーニャ・ハーディングの少女時代も(どんだけすごい人の少女時代ばかり演じるのか)。本人自身エルフ的な可愛さがありながら、実際天才子役という逸材ですね。しかもまだ14歳。マッケナ・グレイス、恐ろしい子
ルル・ウィルソンは、"ウィジャ ビギニング ~呪い襲い殺す~"(マイク・フラナガン作品)"アナベル 死霊人形の誕生"Netflixのホラードラマ"ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス"(マイク・フラナガン作品)などに出ており、ホラー子役の印象が強いです。現在15歳。ものすごく良い子そうに見えますが、"Becky"(未公開)ではそれを逆手に取った役もやってるっぽい。あ、マッケナ・グレイスも"死霊館"シリーズの"アナベル 死霊博物館"に出てたな。
イースターエッグとは言えないほど出てくる(活躍はしない)人ではハナ・ジョン=カーメンがいますね。"アントマン&ワスプ"で敵のゴースト役やってましたけど、あんまり大きくはブレイクしていない印象。一応、今度の"バイオハザード"リブート作("Resident Evil: Welcome to Racoon City")でジル・ヴァレンタイン役を演じるそうです。
 
白眉は何と言っても冒頭のレースシーンでしょ! デロリアンでレースできるのはもちろん、T-レックスやキングコングが障害物になってるし、超スペクタクル。OASISではプレイヤーがダメージを受けると血の代わりにコインが噴き出すので、実はこのシーンでスピルバーグ作品らしく残酷シーン(首チョンパ)があるんですが、レーティングはついてないという。そのコインを拾うと燃料に変わるのも最高。しかし、OASIS死ぬと全財産がその場に落ちて他人に全て奪われるという仕様は鬼ですね(笑)。どこがオアシスやねん。実際にあるEscape from Tarkovってゲームも似たようなシステムらしいですよね。恐ろしい。IOIはそれを悪用し、OASISに課金してた分の現実世界での負債を、部屋に監禁しOASIS内で労働させることにより返済させています。この辺りの捩れた設定にもクラクラ。
終盤、チェイス中の車の中からOASISにアクセスしてるウェイドが振り回されて、中々鍵穴に最後の水晶の鍵を入れられなかったり、OASIS全消去ボタンを押しそうになったりするところは非常にしょうもないギャグで良かったですね(笑)。スピルバーグは笑えるシーン撮れるとこも偉大。"ジュラシック・パーク"でコップの水の振動がT-レックスの登場を匂わせるシーンや、"インディ・ジョーンズ/最後の聖戦"でハンコを押しただけなのにバカでかい音が鳴って司書がビックリするシーンを思い出します。どれも取るに足らない些細なことに見えて、重大な結果に結び付くという演出です。スピルバーグらしい。
音楽も面白くて、「ゼメキスのキューブ」という時間を巻き戻すアイテムを使う際に一瞬"バック・トゥ・ザ・フューチャー"のテーマがかかります。実際、本作の音楽を担当したのは"BTTF"アラン・シルヴェストリだし。
 
スピルバーグって、今74歳ですよ。本作の撮影が始まった時は69歳。感性若すぎでしょ! ヴァーチャルリアリティがテーマであることもそうだけど、本作って子どもの世界じゃないですか。ウェイドの親(実親じゃないけど)は存在感がない上、死ぬけど大して重く扱われないし(笑)、子どもの活躍で世界が救われますよね。人生経験豊富なオタクの神であるスピルバーグが作ってるだけに、メッセージはよくある現実逃避批判ではなく、だからといってポップカルチャーだけあれば良いと言いたいだけの映画でもないです。劇中で「現実(リアリティ)だけがリアルなんだ」って言ってましたね。現実世界でしかできないことは確かにある。しかし、砂漠のように厳しい現実を生き抜くには娯楽が必要です。人生のオアシスとしてね。そのオチとして、「OASISは運営続行するけど、火曜と木曜は定休日にする」ってのは最高にイケてるじゃないですか(笑)。子どもの頃は、大人になって自分があんまりゲームしなくなるなんて夢にも思いませんでしたよ。当時は、ゲームしない日を自力で作れたら、ある意味大人になったも同然でした。この定休日ルール、「子どもが考えるオトナな解決策」として個人的にすごくノスタルジックに響きましたよ。すげえしょうもないオチだけどね(笑)。ゲーム大好き少年少女だった人には伝わるかしらん。
 
 
今回初めて調べて意外でしたが、ハリデーとモローの会社、グレガリアス・ゲーム社の「グレガリアス(gregarious)」とは「社交的な」という意味。劇中でも、「OASISは人と繋がるためのゲーム」と言われます。ハリデーは社交的でなく現実世界に上手く馴染めませんでしたが、なりたい自分になれるOASISはハリデー自身の夢でもあったんでしょうねえ。
本作が素晴らしいのは、その存在自体が全てのポップカルチャー、アート作品への賛歌になっているからです。ウェイドは、OASISを作ったハリデーの人生に思いを巡らせてOASISの謎を解きます。これは、日々Heiroや映画(小説、漫画、音楽、etc.)ファンがやっていることと一緒。作品には作者の人生観や価値観という「現実」が反映されますから、鑑賞すればそれらに触れてこちらも影響を受けます。別に死ぬほどポップカルチャーに触れまくっても良いのですが、何も考えずにそれらをいたずらに消費するのはあまり良いことではないでしょうね。それこそ現実逃避と言われても仕方ない。何かしら感想も浮かばないようじゃ、作者も浮かばれないじゃないですか。「作者はこう意図した」と言い切ると間違いがあり得ますが、「作者はこう意図した、と思う」という感想であれば間違いはありません。自分が思ってもないことでさえなければ。感想はこちらが好きに持って良いものですから、作品は何かを感じ、考えながら観るべきもの。だと思います(感想)。ウェイドの姿勢は非常にオタク的ですが、ポップカルチャーを愛するなら見習うべき態度じゃないでしょうか。本作はポップカルチャーを消費するだけの中身のない大作にあらず、全てのポップカルチャーに触れる際の心得を教えてくれるのです。集大成にして始まり。だからこそ素晴らしいのです。でもさあ、よく考えればOASISは現実を拡張してるだけで、この世にはOASIS以上に多くのポップカルチャーがひしめき合っているわけですよ。現実こそ夢の世界。……のはずなんだけどなあ、おかしいなあ、世知辛いよなあ。
 
原作小説の方では続編の"Ready Player Two"が出ましたが、こっちも将来映画化されるんですかね。スピルバーグじゃないと権利問題クリアできないと思うけど、作るの面倒すぎて寿命縮みそうだからねえ……(笑)。
 
 
★★★★★★★★☆  8.5/10点  
 
Rotten Tomatoes  72%,77%
IMDb  7.4
マイ・フェイバリットシーンは「俺はガンダムで行く!」よりも、アルテミス(サマンサ)が"エイリアン"のチェストバスターでパーシヴァル(ウェイド)を脅かして歯をカチカチするとこ。