Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"ブラック・ウィドウ(Black Widow)"(2021) Review!

「family」の語源は「famulus(奴隷)」。

(※"ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey""ファルコン&ウィンター・ソルジャー"の最後についてのネタバレをしています)

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公式トレイラー


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ようやく公開されましたね(といっても観てからこの記事を書くまでに相当時間が経ってる)。MCU映画はこれまでちゃんと追っかけてるんですが……と思ったら、そういえば何故か"ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス"だけ見逃していることを思い出しました(笑)。何をやっとんだ。プラス、最近作品を観返してないのでどんどん内容が頭から飛んでいきます。"シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ"の後の話と言われても、すげー何となくしか覚えてない。まあ本作は一見さんでも観やすいということで、こっちとしても助かりましたけどね。

 

 

あらすじ

かつて、ロシアのスパイとしてアメリカに潜入していたナターシャ、"妹"のエレーナ、"父"アレクセイ、"母"メリーナの疑似家族は、任務終了と同時にバラバラになった。時は経ち、"シビル・ウォー"後、ソコヴィア協定違反で逃亡していたナターシャは、ブダペストで長らく疎遠だったエレーナに再会。壊滅させたと思っていたブラック・ウィドウ(女スパイ)養成施設"レッドルーム"とボスのドレイコフが健在であることを知らされたナターシャは、"家族"と再び会おうとするが……。

 

 

スタッフ・キャスト

監督は"ベルリン・シンドローム"ケイト・ショートランド。主演はもちろんこれまでMCUでブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフを演じてきたスカーレット・ヨハンソン"ミッドサマー"のフローレンス・ピューやリブート版"ヘルボーイ"のデヴィッド・ハーバー、"否定と肯定"レイチェル・ワイズなどが脇を固める。他。

 

 

ケイト・ショートランド作品は"ベルリン・シンドローム"しか観てません。テリーサ・パーマーが主役だったもので。例によってあんま内容覚えてないという(笑)。観たのはつい3年前のはずなのだが……正直あんまり好みじゃなかったんですよね(笑)。確かテリーサ・パーマーがドイツかどこかに旅行に行って、知り合った良い感じの男の家で一夜明かしたら監禁されてこの男ヤベーじゃん系スリラーだった気がします。タイトルから想像されるように、ストックホルム症候群とか洗脳をテーマにしていたような……。聞く話では、それ以前の作品も女性が洗脳的な支配から解放される、みたいな話を作ってたようですね。まさに今回の"ブラック・ウィドウ"もそういう話で。最近の大作、例えば"スター・ウォーズ/最後のジェダイ"ではライアン・ジョンソン"ワンダーウーマン"ではパティ・ジェンキンス、この前レビューした"ゴジラvsコング"ではアダム・ウィンガードと、これまでアクション大作の経験がない人を起用してます。今回のケイト・ショートランドの場合も面白い人選ですね。もちろんこういった人選の全てが成功してるわけじゃないですが……(先述の作品はどれも好き)。MCUの次作"シャン・チー/テン・リングスの伝説"はドラマ映画ばっか撮ってきたデスティン・ダニエル・クレットンだし、その次の"エターナルズ""ノマドランド"のクロエ・ジャオでしょ。攻めてるよね。

 

やっぱまずキャスティングが面白かったね。ナターシャの少女時代を演じたのはエヴァー・アンダーソン(エヴァ(Eva)ではない。Ever)。ミラ・ジョヴォヴィッチポール・W・S・アンダーソンの娘ですよ! ミラは今でいうウクライナキエフ出身で、セルビア人とロシア人の両親を持ってるらしいので、エヴァーもちゃんとロシア系と言えるわけですな。スカヨハも東欧系の血が入ってるらしいですよ! 別にロシア人はロシア人が演じろなんて言いませんけど、何人もロシア人のキャラがいるのに、俳優の中に1人もロシア関係の血が入ってる人がいないのは寂しいじゃないですか。皆めっちゃRの音を舌を巻いて発音してましたけど、俳優が本作のために練習しないといけないじゃないですか。そもそもロシア人がいれば楽なんだけど、さすがにハリウッドで活躍してるロシア人って多分いないよね……さすがに難しいんだろうけどさあ。ロシア系はいたとしても。アントン・イェルチンとかね……亡くなってしまったけど……合掌。一応、タスクマスターを演じてたオルガ・キュリレンコがれっきとしたウクライナ人ですね。事前に詳しくキャストの情報入れないで観に行ったので、オープニングで名前を見た時にビックリ&もしやと思いましたが、まさに。でもオルガ・キュリレンコ全然喋らないんだよなぁ!!

 

エレーナを演じたのは妹といえばこの人、フローレンス・ピュー。別に実際妹役が多いってわけじゃないでしょうが、何かもう醸し出す雰囲気が「反抗的な妹」なんですよね。今回のエレーナも、シニカルだけど本当は家族大好きってキャラでしたし。最近の作品だと、一応"ファイティング・ファミリー""ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語"(観てないが)では妹役でしたね。"ファイティング・ファミリー"は2019年の個人的ベストランキング上位に入りますし、"ミッドサマー"は2020年のランキングで堂々の1位にしましたんで、かなりアタリ率高い女優です。ただご飯食べてるだけの動画でもずっと見てられます。気取ってなくて面白いし。この動画は編集も面白いけど。って11品はさすがに多いて。フィッシュ&チップス食べてみたい。


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フローレンス・ピューは、今撮影中のセバスティアン・レリオの新作"The Wonder"に出るようです。それで何と、Heiroが日本上陸を心待ちにしているホラー"Censor"の主演ニーヴ・アルガーと共演してるんですな!!

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主演がピューちゃんだし、レリオ作品は割と最近日本に入ってきてるんで、"The Wonder"のタイミングで"Censor"も上陸しても構わなくってよ。っていうか、それだと数年後になりそうなんで誰か早よ権利買ってきて。そういえば、ジュリアン・ムーア主演の"Gloria Bell"って去年の12月に日本公開とか聞いた覚えがあったんですが、その後続報出てないよね。どうなった(笑)? レイチェル・ワイズ"ロニートエスティ 彼女たちの選択"に出てましたね。面白いことに、スカヨハもレリオの別の新作"Bride"で主演するらしいですよ!! 何でこんなに"ブラック・ウィドウ"ファミリーばっか出演するのか分かりませんが、今後の女性映画はレリオに任せろってことなんですかねぇ。

 

ちなみに、少女時代のエレーナを演じたヴァイオレット・マッグロウちゃんはマイク・フラナガンのドラマ"ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス"(傑作!!)で、ヴィクトリア・ペドレッティ演じるネルの少女時代をありえないほどのキュートさで演じていました。ものすごい大福ほっぺです。この子は将来美人に成長するでしょうね。

 

ほんでレイチェル・ワイズ。いつも素敵ですけども、今回のレイチェル・ワイズに心掴まれた人は多かったんじゃないですか? クールな感じなのにデヴィッド・ハーバーとラブラブ熟年カップルやってましたからね。何かドキッとしました。豚ちゃんの息を止めさせた所では「アンタSすぎるやん」と思いましたが……人によっては喜びポイントなの? 劇中で"007 ムーンレイカー"が流れてましたが、本作は"007"オマージュやってますから、夫が現ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイグレイチェル・ワイズが出てるわけですね。オルガ・キュリレンコは実際"007 慰めの報酬"のボンドガールでしたし。ただ、ナターシャがドレイコフ(すげー名前だ)のもとにメリーナに変装して向かうとこは"007"というより"ミッション: インポッシブル"感ありましたね。まあドレイコフは騙せてなかったですけど。

 

オープニング、Nirvana"Smells Like Teen Spirits"のカヴァーに乗せて、後のウィドウとなる女児たちが売買されているような様子が映されます。これが非常に実録ものっぽくて、ダークで良かった。いや良いことじゃないんだけど。ドレイコフはウィドウたちをまさに奴隷化してるわけで、お前の方がお姉さま方の奴隷にふさわしい名前じゃねーかって感じなんですけど、自分の手は汚さずナターシャらのような反逆者の相手をウィドウたちにさせるのが本当に嫌な感じでしたね。女性同士をいがみ合わせてね。「私のフェロモンを嗅ぐと攻撃できなくなる」とか、こんなキモいセリフあります? 演じたレイ・ウィンストンって本作で初めて知った俳優ですが、こういう役ってどんな気持ちで引き受けるんでしょうね(笑)。ガチで良いとこないし……。"バトル・オブ・ザ・セクシーズ"スティーヴ・カレルも男女差別してましたけど、本当にどうしようもない人間とは一線を画す魅力的な人物でしたし。「このテーマを全世界に伝えるために俺が犠牲になろう」つって十字架にかけられる気分なんですかね。デヴィッド・ハーバー演じるレッド・ガーディアンも、最初似たような言動してましたけどね。"娘"2人が教育して、「"娘"たちよ、お父さんの考えが間違っていた!」とか言う展開があっても良かった気はするね。それこそ、スティーヴ・カレル的な所を目指したのかもしれないけど。一応、バカだけど気の良いオヤジだなってのは観客の皆も思っただろうからセーフかな。エレーナが1人になって泣きたい時もウザがられながらも側にいてあげたりしてね。ところでエレーナ、辛い状況の時にロングブレスダイエットばりに「ふうぅぅぅぅぅ」って息吐いてましたけど、これピューちゃん独特の演技なんですね。"ミッドサマー"でやってるの見た時、「すげー生々しい演技するなぁ」と思いましたけど、"ミッドサマー"のダニー役だから、ってことではなかったのかもね

 

ちょっと不満なのは、タスクマスターことアントニアの扱い。戦闘シーンは良かったですよ。めちゃ機敏な動きでカッコ良かったし。ただ、HeiroはMCUライトファンなもんで、全ての動きの元ネタが誰なのかは1回観ただけじゃ分かんなかったですけど。まあ良いや。とりあえずアントニアは、ナターシャがドレイコフを殺そうとして巻き込んでしまったことでタスクマスターになっちゃったわけじゃないですか。もちろん人体改造したのはドレイコフだけど、まあナターシャのせいだよね。それで、"アップグレード"のSTEMみたいなチップを取り除いてあげるのは良いけど、ろくに話もできてないよね。そりゃ時間もなかったけどさ……ちょっとその贖罪の部分が弱いなと。でも、超美人のオルガ・キュリレンコの顔をウッと思わせるほどに崩していたのは好感が持てました。Heiroが提唱する"オリヴィア・クック問題"にはなってなくて。いわゆる"デッドプール解"ですな。だからこそ贖罪をもっとじっくり描いてくれれば……!!

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文句も言いましたが、かなり楽しめました。エレーナが自分の命を投げ打つ覚悟でドレイコフの飛行機を爆破したのもウルッと来ましたし。ドレイコフの最期はあっけなかったですが、"ハーレイ・クインの華麗なる覚醒"ユアン・マクレガーみたいな感じで良かったですよ。「あんなヤツのことを語る時間がもったいない」って感じでね。その直後にナターシャとアントニアの対決になるわけですし。良かったんだけど……ポストクレジットシーンでエレーナがヴァルにスカウトされてるじゃん!! このヴァルは"ファルコン&ウィンター・ソルジャー"でも、闇堕ちした(元)2代目キャプテン・アメリカのジョン・ウォーカーをスカウトしてましたしねぇ。しかも「ナターシャを殺したのはホークアイだ」って吹き込んでたし(あながち間違いでもないが……(笑))。"スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム"のラストもすごいクリフハンガーでしたけど、マーベル、ようやるなぁ……。おそらく、その話はドラマの"Hawkeye"でやるんでしょうな。

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この記事の良い見出しが浮かばなかったので何となく「family」の語源を調べたら、ラテン語の「famulus」から来ているようです。意味は何と「奴隷、召し使い」。「家族」という意味で使われるようになったのは17世紀頃とのこと。まさに、本作はかつて奴隷だった少女が解放され、家族を得るまでの話でした。めでたしめでたし。

 

 

★★★★★★★☆  7.5/10

Rotten Tomatoes  80%,91%

IMDb  6.8

あ……またドラマ観ないといかんのか……。