Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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邦題タイプB(タイプA+サブタイトル)

邦題ラボ、第2のテーマ。

 

前回から5か月ぶりの更新。いかんなぁ!! 新作追っかけるのでも大変になってきたぜ……。

さて、タイプAについては前回お話ししましたが、タイプAの邦題の前か後に独自のサブタイトルが入るパターンをタイプBとして、今回取り上げます。ある意味一番の安全策です。(一応言っとくと、Heiroは別に原題原理主義者ではありません)


タイプAは、良くも悪くも一番不純物が少ないのが特徴です。ほぼ原題そのまんまですからね。ただその場合、外国語がタイトルになるわけで、観客に伝わらない可能性が浮上します。じゃあ他の邦題を考えろという意見にも一理ありますが、そこに説明書き的なサブタイトルをつけることで伝わりやすさを担保しようとするのがタイプBですね(分かりやすいイコール良いことではないと思いますが……)。メインタイトルがシンプルで同題の作品が多い場合は、それらとの差別化を図れるというメリットも。

サブタイトルがある時点で字面が洗練されてないように見えがちなのが難点ですが、まあ手堅い方法とは言えるでしょう。……しかしその肝心のサブタイトルでやらかしてるのではと思える作品もチラホラ。シリーズものの場合はナンバリングするのが普通だが、ナンバリングなしでサブタイトルで差別化しようとした結果、作品の順番が分かりにくくなってしまっている場合もあります。

 

1. サブタイトルがメインタイトルの訳になっているパターン

例.

"アングスト/不安(Angst)"

→「アングスト」はドイツ語で不安のこと。ちなみに「アンクスト」の方が原語の発音に近いらしい。さらに言うと、元々は"鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜"というものすごいマシマシな邦題でVHSが出ているのみの作品だったが、去年、数十年越しの劇場公開が決まったタイミングでこのように改題された。

 

2. サブタイトルが作品の内容を端的に表しているパターン

例.

"IT/イット "それ"が見えたら、終わり。(It)"

→「IT」の意味にかかった(「it」という単語には鬼ごっこの鬼もあるが)サブタイトルで、何となく内容も説明している。語感が少し鼻につくが……。後に様々な作品の邦題に影響(パクられ、パロられ)を与える罪深い邦題である。

 

"イミテーション・ゲーム/エニグマと天才科学者の秘密(The Imitation Game)"

→サブタイトルはどんな映画かを伝えるのに一役買っているが、コンピューターが人間のマネをする、また主人公が「普通の人間」のマネをしていることを示す「イミテーション(模倣)・ゲーム」という秀逸なタイトルのインパクトが薄められている。

 

"カンバセーション ...盗聴...(The Conversation)"

→サブタイトルはそのものずばり、主人公が盗聴を行うこ

とを示しているが、「~」などで囲っても良い所を「…」を用いることで主人公が音を立てないようにしている様を想像させる。こういう例は珍しく、面白い。

 

"クローバーフィールド/HAKAISHA(Cloverfield)"

→「クローバーフィールド」だけでは全く内容が分からない(それが本作の狙いでもあるが)のでサブタイトルを足したい気持ちは分かるが、ローマ字というのが解せない。

 

"クワイエット・プレイス 破られた沈黙(A Quiet Place Part II)"

→当初の邦題は原題そのままの「クワイエット・プレイス PART II」だったが、公開延期の末、おそらくメタ的な意味でも「やっと沈黙を破る」感を込めた「破られた沈黙」というサブタイトルに変えられた。それは構わないが、今後もシリーズが続く場合、本作のナンバリングが消えたことが悪影響を与えないかが心配(何作目かが分かりにくくなるとか、第3弾ではナンバリングが復活してちぐはぐになるとか)。

heiro-chloe.hatenablog.com

 

"サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~(Sound of Metal)"

→「サウンド・オブ・メタル」の意味は映画の後半で明らかになる。邦題でそれには触れていないが、「聞こえるということ」はテーマを説明的な言葉にしてしまっている(本当のテーマはそれより一歩進んだものだが)ので、それが野暮。

heiro-chloe.hatenablog.com

 

"スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話(Hors normes)"

→サブタイトル長すぎ。説明しすぎ。覚えられないし、何の味わいもない。原題は「規格外」という意味らしい。……確かにね。

 

3. サブタイトルが作品のテイストを表しているパターン

例.

"ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-(Hot Fuzz)"

→「ホット・ファズ」は「かっけーサツ」(ダジャレかい)の意味。後半の「スーパーポリスメン」はそれにかかっていると思われる。「俺たち〇〇」という邦題はおそらく2004年の"俺たちニュースキャスター"の後から増え出したもので、コメディ映画によく付けられる。最後の感嘆符もコメディ映画によく付けられ、それがあるだけでコメディと分からせる手っ取り早い方法ではあるが、そういう例が多すぎるので少々あざとくも感じられる。

 

4. サブタイトルが作品の立ち位置を示しているパターン

例.

"アリー/スター誕生(A Star Is Born)"

→普通は「スター誕生」の方がメインタイトルになるはずだが、幾度もリメイクされてきた作品なので、差別化のために主人公の名前が先に来ている。ちなみに、これまでの作品の主人公の名前はエスターなので、アリーと言えば明らかに本作を示している。

 

"ポール・ヴァーホーヴェン/トリック(Steekspel)"

→原題はオランダ語で、調べると「馬上槍試合」という訳が出てくるが真偽は分からず。英語タイトルが"Tricked"なので、邦題はそちらから引っ張っている。作品のタイトルより先に監督名が先に来ている……こと以上に、タイトルに監督名が入っているのは、ポール・ヴァーホーヴェンにしては地味で小さな作品なので、「トリック」だけではありがちだし、存在自体を気づかれないことを恐れてのものか。どうでも良いが、「ポール・バーホーベン」でなく「ポール・ヴァーホーヴェン」と表記されているのを目撃したのは本作が初めて。
 
 
さあ、今回はこんなものでしょうか。ではまた次回。