Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"Sound of Violence"(2021)

芸術には(他人の)魂を込めろ。

(※"ミッドナイトクロス"のオチに触れています)

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公式トレイラー


www.youtube.com

 

"Censor"に引き続き、これこれまたまた聞いたことない設定のホラー映画です。すでに観た人の感想を読むと、大体がそのあまりの異色作ぶりに仰天しています。

 

 

あらすじのようなもの

アレクシスは元々聴覚に障害があったが、10歳の時に家族を殺され、それを目撃した衝撃で聴覚を取り戻した。その際に聞いた音に取り憑かれたアレクシスは、暴力の中にそれを見出し、次々に人を殺めていく……。

 

スタッフ・キャスト

監督はこれが長編デビュー作となるAlex Noyer(アレックス・ノイヤー?)。

スラッシャー映画"スクリーム"シリーズの最新作"Scream"ジャスミン・サヴォイ・ブラウンや、"トマホーク ガンマンvs食人族"のリリー・シモンズなどが出演。

 

 

"Scream"はどうやらリメイクじゃなくて"スクリーム4: ネクスト・ジェネレーション"の直接の続編らしいですね。"スクリーム"観たことないんですけどね。シリーズを作り続けてきたウェス・クレイヴン御大がすでに亡くなっているので、"レディ・オア・ノット"のマット・ベティネッリ=オルピン&タイラー・ジレットが後を引き継いだようです。"レディ・オア・ノット"は最高だったので、ここらでシリーズデビューしても良いかもね。きっと"Scream"も日本公開来るでしょうし。まあ同じく有名な"ソウ"シリーズ最新作の"Spiral: From the Book of Saw"はまだ公開決まってないけどね。まあ別に"ソウ"シリーズファンでもないんですが。

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普通の映画なら、家族が殺されたショックなんか味わいようものなら何かしらの能力を失うもの。喋れなくなるとかね(聴力を失うというのはあまり聞きませんが)。なのに、逆に聴力を取り戻すという設定がまず新しい。また、若い女性が殺人鬼ってのもあんまりないですよね。"キリング・イヴ"ヴィラネル(ジョディ・カマー)とかはいるけど……。殺人の動機がトンデモすぎる上に、殺害方法も宇宙の彼方までブッ飛んでるようです。共感のきの字もなさそうな映画ですが、トレイラーではアレクシスが音を聴いているシーンで画面に鮮やかな色が入ってきます。これは観客に、共感ならぬ、音と色を結びつけた共感覚的な体験を提供しようとしてるのかと思いました。おそらくアレクシスが殺人の際に感じているような。そうだとすると、殺人鬼と観客を同化させる"アングスト/不安"みたいな作品なのかもしれませんね。"サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~"のアノ音も十分暴力的だと思いましたが、本作のもかなりエグそうです。"ファブリック"の監督ピーター・ストリックランドが、音をテーマにした"バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所"なんてカルトホラー撮ってましたが、本作もカルト映画っぽさでは負けてないです。

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 アレクシスが「あの音」に執着するのは何でなんでしょうね。失った家族を思い出せる音だから? 聴覚のように自分の失われた要素が戻ってくる気がするから? 単に血が滾るから? 自分に対するセラピーとかってこともありそう。いずれにせよサイコなんで、近寄らないのが吉ですな。

ブライアン・デ・パルマ"ミッドナイトクロス"のラストでは、ジョン・トラヴォルタナンシー・アレンの断末魔を使ってひとつの芸術を完成させます。人間として大切な何かを失ってね。本作も、メタ的にはアート論についての映画かもしれないね……、人でなしだけどアーティストとしては偉大な人って結構いますし。映画界にもな……。

 

"Censor"と同じく相当アレそうな映画なんで「未体験ゾーンの映画たち」案件かなと思いますが、まーこれも日本公開難しいでしょうね……。

 

 

Rotten Tomatoes  64%,62%

IMDb  5.0

殺人も芸の肥やしなのよね。