Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"レディ・オア・ノット(Ready or Not)"(2019)

これ、「ハイド・アンド・シーク」じゃなくて「サーチ・アンド・デストロイ」じゃね?

(※"ヘレディタリー/継承"のオチに触れています) 

 

公式レッドバンド・トレイラー


READY OR NOT | Red Band Trailer [HD] | FOX Searchlight

 

ここんとこ良い映画ばっか観てる気がするなぁ……。このブログでレビューしてる映画って7点とか8点が多いですが、別にHeiroの基準が甘いわけじゃないですよ。多分。そりゃ観た映画の全てを記事にはしてませんから、気に入ったものが記事になりやすいのは確かですが、それでも面白いの続きすぎで逆に怖い。まあ、事前にリサーチして評判高いのから選んでるのですけど。へへ。

 

あらすじ

グレースは、ゲームの販売で財を成したル・ドマス家に嫁ぐことになった。ル・ドマス家のしきたりでは、一族に嫁ぐ者はランダムで選ばれるゲームに参加しなければならないため、グレースも従うことに。今回選ばれたゲームはかくれんぼ。気楽に思ったグレースだったが、実際は夜明けまでにグレースが見つかれば殺され、見つからなければ一族全員が死ぬという、双方の命をかけたゲームであった。

 

 

キャスト・スタッフ

監督は"スクリーム"の最新作を仕上げている途中のマット・ベティネッリ=オルピン&タイラー・ジレット

主演は2月に"ガンズ・アキンボ"の公開が控えるサマラ・ウィーヴィング"Promising Young Woman"のアダム・ブロディや"マッド・ナース"メラニー・スクロファーノなどが出演。

 

 

けっこう無意味に人がバンバン死ぬ、えらい不謹慎コメディです。特に日本人に対しては人を選びそうな作風ですが、ブラックコメディに耐性がある人には超オススメします。

サマラ・ウィーヴィングはその名前から分かるように、"マトリックス"エージェント・スミスを演じていたヒューゴ・ウィーヴィングの姪です。顔も似てますが美人です(笑)。本作の演技を見れば新世代スクリーム・クイーンの称号は確実ですね。スティーヴン・ユァンと共演した"Z Inc. ゼット・インク"でもキレキレだったんで今回はどうかなと思ったら、最初は本当に弱そうに見えるのがすごかったですね。観客は、ラストにはグレースが一族にリベンジすることを大体予想して観てるわけですが、ちゃんと役の変化に振り幅がありましたね!

メラニー・スクロファーノについては、主演していたドラマシリーズの"ワイノナ・アープ"は観てませんがちょこっと出てた"マッド・ナース"は観ました。エミリア・クラークを思わせる豊かな表情と、とんでもないチャームの持ち主です。本作でも抜群の可愛さです。

 

この映画面白いのが、グレースの夫アレックスの視点で考えると、"ヘレディタリー/継承"みたいな話になる気がします。唯一のデスゲームであるかくれんぼが最後に行われてから30年経った現在が舞台ですが、アレックスはゲームで人を殺す家族が恐ろしくて家を飛び出したのに、結局は家族の伝統に囚われていきます。家族という呪いの話です。オチもオカルトだし(笑)。でも、アレックスよりも、30年前のかくれんぼにアレックスを関わらせないようにし、そのトラウマを全て引き受けて、アルコールに溺れながらもグレースを救い死んでいくダニエルの方が良いキャラクターでしたね。彼にはハッピーエンドを用意して欲しかった気持ちもありますが、30年前にグレースの立ち位置にいた婿の死に、当時子どもだったとは言え加担しているので、グレースを助けることで贖罪をしたんでしょう。

お婿さんでもお嫁さんでも、相手方の家に嫁ぐ人は大変ですね。この映画は現代の青髭みたいな話ですが、「かくれんぼ」をしないだけで似たようなことは世界各地で起こってるのかも。他人を引き入れないと家族は存続できないのにね。何て偉そうなの。

 

おっちょこちょいなので間違えて人を殺しまくる、メラニー・スクロファーノ演じるエミリーもお気に入りキャラでした。この一族の人間らしく人を殺しても大して動じないサイコなんですが、ほんと憎めないですね(笑)。文字通り死の天使です。執事のスティーヴンスみたいに一族の人間でもないのにホンマもんのサイコもいますけどね! アンディ・マクダウェル演じるアレックスの母ベッキーは、かつてはグレースのような花嫁だったのに、今では完全に一族の思考に染まっています。普通のお宅ならそれで良かったんですけどね(笑)。最初からずっと怖い感じのエレーヌおばさんは、30年前のかくれんぼで夫(婿)を喪ったものの、最も一族の伝統にこだわっています。もしここで伝統を捨ててしまうと、かつて夫を殺してまで伝統を守った意味がなくなりますから、引くに引けないのでしょう。悲しいキャラクターですが、そこからアレックスは何も学ばなかったのか全く。とは言え一族の伝統にはル・ベイルという、はっきり言って悪魔が関わっているので逃げる術は最初からなかったのかもしれないですが。

名前がル・ベイル(Le Bail)で正体は悪魔というところで、"007 カジノ・ロワイヤル"マッツ・ミケルセンが演じていたル・シッフル(Le Chiffre)を思い出しました。ル・シッフルってルシファー(Lucifer)のもじりかなと思ったら、フランス語で「The Number」の意味だそうです。恥ずかし! ル・ベイルは悪魔のひとりであるベリアル(Belial)のアナグラムのようです。劇中では「サタン万歳!」って言ってましたけどね。さらに、ル・ドマス家(Le Domas)はアスモデル(Asmodel)のアナグラムらしいんですが、そっちは天使の名と出てきます。ただ、ウィキペディア読むと、元は天使だったけど堕天して悪魔になったという説があると書いてあります(笑)。壮大な話ですが出典も書かれてませんし時間もないので、「何かすごい」とでも思っていれば大丈夫です。

 

ランダムに(ル・ベイルの好きなように)ゲームを選ぶ箱は"ヘル・レイザー"に出てくるルマルシャンの箱を、グレースが死体置き場に落ちるところは"フェノミナ"ジェニファー・コネリーが蛆虫のプールに落ちるシーンを思い出させます。実際にオマージュしているかは分かりませんが、そういう意味でもホラー好きが観て面白い映画だと思います。

あと、去年"ザ・ハント"を気に入った人にもオススメです。同じく「金持ちが貧乏人狩りしてた」系映画ですし、向こうのベティ・ギルピン様のようにこちらのサマラ・ウィーヴィングも素晴らしく印象的なパフォーマンスを披露しています。特に叫び声がすごくて、終盤悪魔の生贄にされそうになり間一髪で逃れた時が動物のわななきにしか聞こえません。ヤギみたいなね。ブライアン・デ・パルマ"ミッドナイトクロス"サマラ・ウィーヴィングが出てればジョン・トラヴォルタに最高の悲鳴を提供できたでしょう(笑)。ホラーにはヒステリックな演技が付き物ですが、サマラの演技には緩急があって、ガチ怯えとガチクールな瞬間が交互にやってきます。さらにコメディエンヌとしてもイケてて、ヒッチハイクに失敗したり車のオペレーターが役立たずだった時の落胆→ガチギレ→号泣の流れが絶品です(笑)。安易に主人公がサポートを得られないのはホラー映画で何万回も目にしてきた展開ですが、ちゃんと最高のギャグとして機能してます。

もちろん"ヘレディタリー"のファンにもオススメします。一族の人間が富と引き換えに悪魔に魂を売ってるってとこがモロ一緒だから……ってのは冗談としても(笑)、こちらもかなりハイレベルな映画だと思いますよ! あ、ゲーム繋がりのブラックコメディという点で言えば"ゲーム・ナイト"のファンにも! もちろん本作から入っても良いし。"ゲーム・ナイト"の方がブラックさはないので見やすいし、そっちも超笑えます。

 

今回、ル・ドマス家の皆さまは、かくれんぼとして行われていたル・ベイルの賭けに負けて赤い風船のように容赦なく破裂させられてましたね。さて、初めて次回予告しますが、何と赤い風船死が重要な要素として出てくる青春コメディ映画の新作があるんですよ。キャサリン・ラングフォード主演の"スポンティニアス(Spontaneous)"です! すごく評価も高いし、予告が最高に笑えます。2/3からiTunes Store(のみ?)でリリースされるようなので、出たらすぐ観ようと思ってます。

それでは皆さん、家族という名のカルトにお気をつけて。

 

 

★★★★★★★★  8/10点

Rotten Tomatoes  88%,78%

IMDb  6.8

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