死に結び付く運命の赤い糸
公式トレイラー
また未体験ゾーンの映画たち選出作品ですよ。その中で一番期待してた作品なもんで逆にちょっと放置してたんですが、覚悟決めて観ました。ガチで変な映画でした(笑)。
あらすじ
ウィンターセール中のデパートでシーラは真っ赤なドレスを購入するが、それは呪われた「殺しのドレス」であった。
スタッフ・キャスト
監督は"バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所"(怪作!)のピーター・ストリックランド。
主演は"オール・ユー・ニード・イズ・キル"のマリアンヌ・ジャン=バプティスト。脇を固めるのは"ゲーム・オブ・スローンズ"のグウェンドリン・クリスティー、"わたしは、ダニエル・ブレイク"のヘイリー・スクワイアーズなど。
"バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所"って何て覚えにくいタイトルなんでしょうか。長いし。原題は"Berberian Sound Studio"ですからね。随分と長ったらしい邦題になったものですが、中身の怪作ぶりを考えればキャラが立ってて個人的には嫌いじゃありません。面白いと思えるかは賭けですが、興味がある方は観てみてね。
トレイラー観てもらえば分かると思いますが、ものすごくキッチュ(とでも言えば良いのか)な映像でしょ。良くも悪くもかなり個性的です。他にこんな映像作家っていましたっけ? "バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所"は別にこんな映像じゃなかったと思いますが……あれ、どうだったかな? 本作、非常にアーティスティックでわけ分からん映画だったんですが、全然お高くとまってなくて好感持てましたよ。ギャグも下らないしね(笑)。そう、この映画は下ネタありのシュールコメディなのです。一応ホラー的な瞬間はありますが、「何かウケる」と思いながら観れば良いと思います。A24はアメリカでの配給に関わっているだけのようですね。
あ、そう言えばかなりヘンな映像で記憶に残ってるのはエレーヌ・カッテ&ブルーノ・フォルツァーニ作品ですね。日本で普通に観られる"煽情"と"デス・バレット"、そしてあらゆる死のポートレイト"ABC・オブ・デス"に入っている彼らの短編はチェック済みですが、アクの強さがものすごいです。個人的には、どのシーンも印象的な映像作家の頂点だと思うのはアレハンドロ・ホドロフスキー(特に"リアリティのダンス")ですが、エレーヌ・カッテらとピーター・ストリックランドの映像には俗悪な(誉めてる)感じがあって、個性的で目を奪われます。それが作品の理解を容易にすることを拒んでいるんですが、ハマる人は映像的快楽でぶっ飛ぶんでしょう。エレーヌ・カッテらの作品は正直わけ分からなすぎで苦手な印象もありますが、ここまで突き抜けてれば好き嫌い関係なく観ておいた方が良い気がします。彼らの作品はタイトルも良いんですよね。"煽情"は"Amer"=「苦味」、"デス・バレット"は"Let the Corpses Tan"(この英題は原題直訳)=「死体を日に焼けさせろ」みたいな。全くわけわかめでございます。ちなみに、2015年のマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルで取り上げられたっきりの"内なる迷宮"は"The Strange Color of Your Body's Tear"(これも直訳)=「あなたの体の涙の奇妙な色」です。キてます。これはソフト化されてないので、上陸したら即観ます。
旦那と離婚したばかりで人生上手くいってない50代のシーラが、新聞広告で新たな恋人を探すところから映画は始まります(恋人募集広告のことをlonely hearts advertisementというそう)。デート用のドレスを買うためにデントリー&ソーパーズというデパートに行くんですが、そこの女性店員がすごい(笑)。言葉遣いが独特すぎて、何言ってるか分からないようで分かるようで分かりません。これ訳した人大変だったろうな。この店員はミス・ラックモアというんですが、非常に良いキャラしてます。実はカツラで本当はスキンヘッド、デパート内を移動する時は狭い荷物用エレベーターにうずくまって乗るタイプのヤバい人です。この映画、監督インタビューによればどうやら1993年が舞台のようですが、もっと古い時代に見える気もします。ダサくてクールな映像と音楽のせいでね。ジャーロ映画も好きなようですし。デパートではお釣りを気送菅(って言うのね、初めて知った)でやり取りしてたりして雰囲気が良かったですね。"キャロル"でも気送菅見た気がするな。もしかして、Heiroが見たことないだけで、ありふれたものなの? 死ぬ前に一度使ってみたいや。
このデパートの店員たちは何かのカルトみたいな感じで、謎の儀式を色々とやってます。魔女っぽい。異常にマネキンを愛でており、老支配人が見てる前でミス・ラックモアがマネキンの服を脱がし、そのお股をさわさわして老支配人が大興奮するシーンまであります。バカじゃないの(笑)。こんなシーンを思いつくなんてピーター・ストリックランドは正気じゃないですね。ビックリしたのがマネキンのお股にはお毛々まであって本物みたいな見た目なんですがモザイクがないんですよ。フランク・ヘネンロッターの"バッド・バイオロジー 狂った♂♀(ヤツら)ども"を観た時だったか別の映画だったか忘れましたが、精巧に作られていても本物じゃなければモザイク要らないんだなあと妙に感心しました。モザイクあるとシリアスなシーンでも笑っちゃいますからね。映画にモザイクは本当に要らないと思います。この老支配人もミス・ラックモアと同じで何言ってるか分かりませんが、デパートで万引きが発生すると犯人をその場で羽交い絞めにするほどバイタリティのある人なのでただのヘンタイ老人ではありません。
シーラの息子ヴィンスは憎たらしいヤツで、ストレスフルなシーラの日常にさらにストレスを投下していきます。夕食作った後で「今日は外で食べるから要らねーよ!」みたいなね。しかも彼女のグウェン(グウェンドリン・クリスティー)も曲者で、シーラに対してズケズケと物を言います。嫁と姑の立場が逆転してるような感じで、あまりに嫌みったらしい発言に笑います。グウェンドリン・クリスティーは"ゲーム・オブ・スローンズ"と"スター・ウォーズ"シリーズでのキャプテン・ファズマ役でしか見たことなかった(しかもファズマは顔出さないし)けど、良いキャラしてましたよ(笑)。