Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"アーミー・オブ・ザ・デッド(Army of the Dead)"(2021) Review!

好きなことができないのは死んでるのと同じだ! 

(※何となく"リトル・モンスターズ"のオチに触れています) 

 

公式トレイラー


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ザック・スナイダーがカムバック! 特にスナイダーファンってわけじゃないけど、素直に喜ばしいことじゃないですか。いち映画ファンとしてね。しかも、スナイダーにとっては本作は原点回帰であると同時にリスタートを切る一作でもあるわけですよ。デビュー作がゾンビ映画"ドーン・オブ・ザ・デッド"だったわけだけど、同作はジョージ・A・ロメロ"ゾンビ"のリメイクだったのが、本作はオリジナル作品だからね。じゃあ観てどうだったのよと言われると……深く考えなければ面白いよ(笑)!

 

あらすじ

エリア51から輸送されている途中に不慮の事故が起こり、ゾンビがラスベガスに解き放たれてしまう。スコットら住人は隔離されており、衛兵に多額の賄賂を渡して脱出でもしなければ一生このような生活が続くおそれがある。核弾頭によるゾンビ殲滅作戦が数日後に迫る中、スコットと仲間たちは命を賭けてラスベガスの中心部にある大金庫に眠る2億ドルを手に入れようとするが……。

 

スタッフ・キャスト

監督は前述の通りザック・スナイダー。主演は"ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー"デイヴ・バウティスタ"ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち"のエラ・パーネルや、"カウボーイ&エイリアン"アナ・デ・ラ・レゲラなどが脇を固める。

 

 

突然ですが、Heiroは映画の中の「脇見運転して事故るシーン」が大嫌いなんですよ。やつら大抵90°横向いてやがりますからね。走行中にありえないって。もうちょい実際にありそうな塩梅で見せてくれと思うわけです。本作でも、脇見運転がゾンビが野に放たれる原因になるんですが、事故で起こる爆発があまりに景気良いので許しました(笑)。

オープニング、エルヴィス・プレスリー"Viva Las Vegas"のオシャレなカヴァーに乗せて、ラスベガスがゾンビに支配され、人間たちがどう戦ったのか、そして主人公たちがどう生き延びてきたかをダイジェストで見せてくれます。ここ驚きましたよ。だってトム・フォード"ノクターナル・アニマルズ/夜の獣たち"のオープニングそっくりなんだもん! 別にたまたまでしょうけどね。ゾンビに機銃掃射してガンガン肉片と化していくシーンがゴアゴアしくて素晴らしいです。2つの意味でフレッシュ(flesh, fresh)! このオープニング、情報量が多いので初見じゃ圧倒されるだけだったんですが、曲調に合わせたストーリー進行になっているし、ゾンビ・人間双方の色んな死に様が拝めて最高です。合掌。映画を観終えて主人公たちの顔を覚えたら、このオープニングだけでも観直しましょう。「Viva Las Vegas」とは「ラスベガス万歳」の意味ですが、「viva」は元々「生きろ」を意味します。でもこの曲の裏でラスベガスは完全に死んでます。最高の皮肉ですね。自由の女神も朽ち果てて腕もボロボロですが、それがいかにもゾンビに食いちぎられたような見た目になってて、本当にセンス良いです。

 

主人公たちについて、キャラが立ってないことはないんですが、ちょっと掘り下げが弱いですね。"アベンジャーズ"みたいな、円形に並んだ主人公たちをぐるっと一周しながら撮るショットもあるんですけど、向こうのヒーローたちほど個性強くないですね(比べるのは酷だけど)。せっかくの真田広之もチョイ役でしかありません。それがもったいないかな。余談ですが、真田広之が強奪作戦を「死ぬほど簡単です(イージー・ピージー・ジャパニージー(Easy peasy Japanese-y))」と言うと、キャラの1人に「差別的だから最後はレモンスクイージー(lemon squeezy)に変えて」と言われ「いやでも自分日本人ですし……」というギャグがあります。先日公開された"モンスターハンター"の中で「膝(ニーズ)」と「中国人(チャイニーズ)」をかけたジョークが登場し、人種差別的だと問題になったそうですが……まあ本作ので怒る人はいないでしょう(笑)。ドゥー・ユー・ノウ・ホワット・アイ・ミーン、ジェリービーン? シー・ユー・レイター、アリゲーターやで。余談ついでに、真田広之の吹替は本人がやってるんですが、本当に違和感なくて素晴らしいですね。本人なんだから当たり前ではありますが(笑)。

個人的に気に入ったキャラは、デイヴ・バウティスタ演じる主人公スコット……ではなく彼に思いを寄せるマリア(アナ・デ・ラ・レゲラ)、統率されたゾンビキングダムに詳しい案内人のコヨーテことリリー(ノラ・アルネゼデール)、芸術家肌の金庫破りディーター(マティアス・シュヴァイクホファー)ですね。ただ、最初に「深く考えなければ面白い」と言ったように、それぞれ長所・短所あります。アナ・デ・ラ・レゲラは優しそうな美人なのに毅然としてゾンビに立ち向かうのがフレッシュかつクールなんですが、そんなにスコットとのドラマもないまま死んでしまいます。死に様は印象的ですが……こんなところで殺すなんてスナイダー許さんぞ! ノラ・アルネゼデールは一匹狼でミステリアスなキャラなんで、昨年ベスト11位の"ザ・ハント"のベティ・ギルピンのようにこの1年を代表するようなニューヒロインとなるかと思いきや、割と等身大の女性でした。"ターミネーター: ニュー・フェイト"のマッケンジー・デイヴィス感もあったのに……もうちょっと活躍するシーンをだな……。

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初見のこの2人と違い、マティアス・シュヴァイクホファーはドイツのコメディ"100日間のシンプルライフ"ですでに見たことありました。コミカルなキャラが得意そうで、本作では金庫をアーティスティックに語りながらヘタレでドジで可愛いディーターを演じてますが、オフビートと言うにはあまりにゆるいギャグも散見されましたね。本作をコメディとしても観れるかは個人差が大きいと思われます。うん。全キャラ、飛び抜けて「ここ神!!」ってシーンが足りなかったと思いますね。どのシーンも総合点はそれなりに高いんですけど。

 

その分ゾンビのオリジナリティに気を配ったのか、ゾンビには結構フレッシュなポイントありました。まずゾンビの声がすごい。"SF/ボディ・スナッチャー"かって。このゾンビたちは寝るし、金庫のトラップで壁に挟まれて潰されたゾンビがネチャア……ってなってるゴアシーンも良い。"ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結"のトレイラーで、キング・シャークに体を真っ二つにされてる可哀想な人がいましたが、見た目はあれに似てましたね。ゾンビ犬ならぬゾンビタイガーが登場し、ムカつくキャラをゴアゴアしく始末してくれるのも良い(ただし出番は少ない)。ゾンビホース(馬)も出るし(ただし活躍はしない)。

ゾンビたちには「ゼウス」と呼ばれる王がいて、そいつに噛まれると「アルファ」と呼ばれる強力ゾンビになれます。ある程度知能があり、動きも俊敏。ゼウス以外に噛まれると普通のポンコツゾンビである「シャンブラー」になります。ゾンビの世界にも血統があるんですな。世知辛いぜ。ゼウスには妻、つまり女王の「アルファ・クイーン」がいます。女王の割にはかなり前線で戦ってますが(笑)。クイーンが高所から降り立つシーン、"悪女/AKUJO"冒頭のキム・オクビンみたいで笑いました。ゾンビキングダムではとびきり美人なんでしょう。知らないけど。しかし、ゾンビの社会でも、死んでまで美しいことに価値が見出されるんですね。逆にゾンビ界では死ぬほど醜い者が賛美される社会だったりすれば面白いのでは……とか思ったら負けなんですよこの映画(笑)。

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最初、リリーがゾンビキングダムに詳しくて、あんまり調子に乗った行動しなければゾンビも見逃してくれるって教えてくれるんですよね。ゾンビたちはゾンビたちでそれなりに幸せに「生きている」(言葉の綾ね)ところを見せているのに、スコットらは別に和解しようとはしません("アイ・アム・レジェンド"とかも似たとこある)。それこそ、"SF/ボディ・スナッチャー"では地球外生命体に肉体を乗っ取られた方が争いのない「良い」社会になりますよね。そういう価値観の逆転みたいなことにスナイダーは興味がないようです。昨年ベスト12位の"リトル・モンスターズ"のラストではゾンビとの和解の可能性が匂わされ(結局叶わないけど)、まだゾンビ映画には開拓すべき要素があるなと思っただけにちょっと残念。また余談ですが、ゼウスたちが根城にしているのが、ゼウス(全知全能の神)だけに「オリンパス・ホテル」(の廃墟)。先日"エンド・オブ・ホワイトハウス(Olympus Has Fallen)"のレビューをしましたが、こっちのオリンパスも無事フォールンしてました(笑)。しかし、またレビューする作品に奇妙な共通点がある法則が更新されましたな。

ゼウスとクイーンは純愛っぽかったのに普通にスコットらに殺されるし。よりによってクイーンは首チョンパされます。尊厳も何もない。チョンパされた首はまだ生きててガウガウ言ってるのが可愛かったですが、ビルの屋上から落とされてグチャグチャになります……(泣)。何とクイーンはゼウスの子を妊娠してて、首のない体からゼウスがゾンビベイビーを取り上げるもののそのまま死んじゃって……、おい! こんだけ気になる設定出しといて投げっぱなしかい!! ゾンビが子ども作るとか、本気なのか冗談なのか分からん……こんなことばかり言ってHeiro頭おかしいと思われるかもしれませんが、本作が頭おかしい映画なんですよ(笑)!!

そうそう、ゾンビキングダムの入り口には干乾びた無数のシャンブラーがいて、リリーが「雨が降ったら数時間で復活する」って言うんですが、雨は無事降りません(笑)。空気読め!!

 

本作のテーマとして一番どう描かれるか気になってたのは、「娘との関係性」なんですよ。というのも、スナイダーは"ジャスティス・リーグ"撮影中に娘のオータムを自殺で亡くし、同作を降板してますからね。「本作は原点回帰であると同時にリスタートを切る一作」と言ったのはそこで、エラ・パーネル演じるスコットの娘ケイトが生き残るじゃないですか。スナイダーはこのケイトというキャラにオータムを重ねてるはずだと思うところですが、うーん、そんなに強く押し出されてないんですよね(笑)。まあ生き残っただけでエモいから良いか……。ただ、ゾンビ化したスコットをケイトが殺しますよね。スコットが過去にゾンビ化した妻、つまりケイトの母を殺したシーンと重ねてるのは分かりますが、父親としては意識があるうちに自分でケリつけるべきだったんじゃないのという気もしますね。娘に父殺しの経験をさせるのはあまりにも忍びないでしょ。スコットは生還できたらキッチンカーをやりたいと話しますが、ジョン・ファヴロー"シェフ 三ツ星フードトラック始めました"を思い起こさせる設定ですね。あれはジョン・ファヴローが映画監督として初心に立ち返るための映画だったと言われていますが、スナイダーはそれオマージュしてるのかな。さっき"ノクターナル・アニマルズ"の話もしましたが、町山智浩さんの解説によれば、あれはトム・フォードの人生のリスタートになった映画らしいので、映像が似てるのが偶然としても作品の立ち位置が共通してて面白いですね。本作は、一生隔離生活よりも、死ぬ危険があっても好きに生きようとする者たちの話です。ドラマは薄く、娘との関係性についても深掘りされていませんが、「俺はこれがやりたいんだ!」って感じでスナイダーが撮ってるのは伝わってくるので、どん底にいたスナイダーを救う一作にはなったんでしょうね。そこもエモいから良いか……(笑)。スコットが妻殺しの件でケイトに嫌われたと勝手に思いこんだ結果関係に溝が入ったってのはまだ良いとして、このケイトとの会話をマリアとの会話でも繰り返す演出には爆笑してしまいましたけど。天丼ギャグみたいに見えちゃって……。ギャグで一番笑ったのは、脳内パリピの大統領が核弾頭投下を花火に例えていきなり爆破を24時間前倒ししたとこですね。一番笑えないとこですが……(笑)。「爆破まで9分」と言ってから、本当に9分くらいで爆破シーンになるので、そこは偉いです。映画だとよくインチキしますもんね。ただ核爆発の描写はいつも通りです。"インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国"の冷蔵庫はひどかったし、ギャレス・エドワーズ"GODZILLA ゴジラ"もひどかったですよね。特に"GODZILLA"は、主演のアーロン=テイラー・ジョンソンが爆弾処理班役なのに爆弾解除しないし、「とりあえず派手な画あった方が良いよね」って感じで核爆発させてますからね。爆発しなくてもストーリーに影響しないのに!! 爆心地から無事に生還したヴァンデルローエ、核の描写がきっちりした映画なら長く生きられないとこですが、本作の感じだと別に関係なさそうね……と思ったら、実はゾンビに噛まれてましたってオチでした。どっちにしろ長く生きられないですが、そういうお茶の濁し方かって。スナイダーよ!! 別に良いんですけどね。

 

アクション映画にしては148分と長いし、上記のようにドラマは薄いし、ピンボケのシーンが多くてかなり人を選ぶ映画だと思います。劇中で発される「俺たちは実は無限ループしてるんだ」なんて超気になるセリフにも意味ないし(その設定で映画1本撮れるだろう(笑))。でも復帰作としては文句なく元気な作品になってるし、"ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット"もちょうどリリースされたし、流れが来てると思います。ちゃんとゴアたっぷりだしね! とりあえず何も考えずに楽しんで、今後のスナイダーにも期待しましょう。

 

 

★★★★★★★  7/10点

Rotten Tomatoes  69%,76%

IMDb  5.9

とりあえず誰かゾンビ×ループものの映画作れ。