Heiroの2020年ベスト10(+α)&ワースト10(+α)
一般的に新作があまりなかったとは言われますが、やるしかあるまい。
色々あった2020年ももう終わりましたね。Heiroも映画ブロガーの端くれ。すべての映画好きの義務たる個人ベスト選定しなきゃ年は越せないぜ……と思っていましたが、記事が長くなりすぎてあけおめしてしまいました。くそう。しょうがないので、泣きながら2020年に観た107本の中で気に入った映画、気に食わなかった映画に加え順位をつけていきます。好きな映画がワーストに入ってても許してね!
まずは2020年ベスト10!
と言いたいところが、どうしても絞れないので、2020年ベスト12!
12位. "リトル・モンスターズ(Little Monsters)"(2019)
監督:エイブ・フォーサイス
Rotten Tomatoes 80%,100% IMDb 6.3
ほんとにルピタ・ニョンゴという人は仕事を選びませんね(笑)。アカデミー賞俳優なのに、こんなふざけたゾンビ映画にも出てくれました。ふざけてはいますが決して駄作ではなく、爆笑必死のゾンビコメディです。ラストの展開には、ゾンビ映画の新たな可能性を垣間見た気もしました。気がしただけですよ。でもオススメです。
11位. "ザ・ハント(The Hunt)"(2020)
監督:クレイグ・ゾベル
Rotten Tomatoes 57%,66% IMDb 6.5
"リトル・モンスターズ"よりふざけた映画でしたが、これ観てベティ・ギルピンのファンにならない人はいないでしょう! 間違いなく今年イチ、スクリーンの中でカリスマ性を発揮させてました。それだけでもうベスト。政治的な意見は色々あろうが、ベティ・ギルピンがカッコ良いことに議論の余地はない! 以上!!
10位. "ロッジ -白い惨劇-(The Lodge)"(2019)
監督:ヴェロニカ・フランツ&ゼヴリン・フィアラ
Rotten Tomatoes 74%,51% IMDb 6.0
監督らの前作"グッドナイト・マミー"に続いて、子どもの無邪気な邪気をテーマにした作品。アフター"ヘレディタリー"な作品でハリウッドキャストも出てるので、"グッドナイト・マミー"よりは格段に見やすくなりつつも、このベスト作品リストの中でトップクラスに陰鬱。でも何だか心に残ります。主演のライリー・キーオに誰かハグしてあげて。
9位. "イミテーション・ガール(Imitation Girl)"(2017)
監督:ナターシャ・ケルマーニ
Rotten Tomatoes 89%,44% IMDb 4.9
あんまり知られていないであろう、GEO限定リリース作品。B級ホラーでよく見るローレン・アシュリー・カーター主演のSFです。ポルノ女優に擬態した宇宙人が、擬態元のポルノ女優に会いに行くだけっちゃだけな話なんですが、見た目より水深の深い作品に思えました。宇宙人ローレンを見るためだけでもこの映画を観る価値があります。
8位. "ワンダーウーマン 1984(Wonder Woman 1984)"(2020)
監督:パティ・ジェンキンス
Rotten Tomatoes 61%,73% IMDb 5.6
最高のクリスマスプレゼントになりました。のっけからハッピーな気分にさせてもらって、クリス・パインが出てきてからはウルウル。別に劇中の季節はラスト以外クリスマス関係ないんですが、クリスマスの精神を体現したような作品になってました。誰かワンダーウーマンにもクリスマスプレゼントあげてよ……。キャストのクレジット後にもサプライズがあるので見逃さずに。
7位. "エノーラ・ホームズの事件簿(Enola Holmes)"(2020)
監督:ハリー・ブラッドビア
Rotten Tomatoes 91%,71% IMDb 6.6
ミリー・ボビー・ブラウンの魅力が満載。"ストレンジャー・シングス 未知の世界"を観たあなたはもちろん、Heiroのように観てないあなたにもオススメ。劇中でバディを組むことになるイケメンがちゃんと中身のある役になっているのも好感が持てます。若い人が見やすいライトでポップな作りでありながら、ラストはかなり切ない。超絶続編希望な一本でした。しかしサム・クラフリンはクズの役が多いな……。
6位. "ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(Knives Out)"(2019)
監督:ライアン・ジョンソン
Rotten Tomatoes 97%,92% IMDb 7.9
ジェイデン・マーテルの出番の少なさには少し不満を感じつつも、豪華すぎるキャストは言うまでもなく素晴らしいです。ダニエル・クレイグを差し置いて、アナ・デ・アルマスがあまりにも魅力的。驚くアナ、リバースするアナ、木片を投げるアナなど、コロコロ変わるアナの表情と仕草を見ているだけで多幸感に襲われます。"007/ノー・タイム・トゥ・ダイ"も期待できるね!
5位. "ワイルドライフ(Wildlife)"(2019)
監督:ポール・ダノ
Rotten Tomatoes 93%,73% IMDb 6.8
俳優ポール・ダノの監督デビュー作。まさかここまで上質な作品を作り上げるとは! ストーリー自体はなんてことない離婚間近の両親に挟まれた子どもの成長物語なんですが、演じているエド・オクセンボールドが健気で健気で……。こういう話でありがちな辛気臭い感じにはならず、子どものたくましさを爽やかに描いています。何があろうと、子どもは育つ……ワイルドライフ、野生動物のように。必見!
4位. "ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn)"(2020)
監督:キャシー・ヤン
Rotten Tomatoes 78%,78% IMDb 6.1
"スーサイド・スクワッド"はアレなことになってしまいましたが、この作品は違います。別に男がいなくてもノープロブレムなマインドがたまらなかったですね。アクションも非常にフレッシュでしたし、ハーレイ・クイン以上にブラックキャナリーとハントレスのキャラクターが気に入ったのも予想外で良かったです。ハントレスかわいい。
3位. "スケアリーストーリーズ 怖い本(Scary Stories to Tell in the Dark)"(2019)
Rotten Tomatoes 78%,72% IMDb 6.2
邦題には若干不満がありつつも、監督の前作"ジェーン・ドウの解剖"に引き続き被害者・加害者関係の逆転を描いたホラーで、とても素晴らしかったです。児童文学が原作でありながら恐怖描写は観客を殺しにかかっているし、ラストも完全に大人なオチでした。続編の企画も進行中のようなので、超期待しています。
2位. "ナイチンゲール(The Nightingale)"(2018)
監督:ジェニファー・ケント
Rotten Tomatoes 86%,73% IMDb 7.3
"ババドック 暗闇の魔物"の監督が贈る、"オーストラリアン・ヒストリーX"。映画祭で途中退場者が続出という売り文句でも有名ですが、凄惨な暴力描写は決して露悪的なものではなく、しかしまたカタルシスもありません。家族を奪われた主人公は獣となり復讐の旅に出ますが、最後には人間に戻っていきます。まるで"マッドマックス 怒りのデスロード"のマックスのように。終盤の主人公とアボリジニの男との絆には胸が熱くなります。しかし本当にサム・クラフリンはクズの役が多いな……。
1位. "ミッドサマー(ディレクターズ・カット版含む)(Midsommar)"(2019)
監督:アリ・アスター
Rotten Tomatoes 83%,63% IMDb 7.1
結局2月に観たこの作品が1位か……。さすがに12月までに1本くらいはこの作品以上の衝撃を受ける映画にめぐり逢うだろうと思ったんですが叶わず。まったく主人公の境遇と共通するところのない人生を送っているHeiroですが、"ミッドサマー"は非常に好きです。"ヘレディタリー"より好き。残酷であり異様でもある二重にグロテスクな映画ですけれども、巷ではセラピー効果があるとか言われてましたね。主演のフローレンス・ピューについてですが、2019年には"ファイティング・ファミリー"、2020年には"ミッドサマー"と大傑作続きですから、おそらく2021年の"ブラック・ウィドウ"でも最高の存在感を発揮してくれるでしょう。2年前の大晦日に劇場で"ヘレディタリー"観てきっちり旧年を引きずったHeiroが、あなたに新年1発目にこの作品を観ることをオススメします。
続きまして、2020年ワースト10! いやワースト11!!
ここでは単純に面白いと思えなかった映画以外に、それなりには面白いけど期待していたほどではなかった作品もランクイン。面白くない度というよりガッカリ度かな。
11位. "ジョジョ・ラビット(Jojo Rabbit)"(2019)
監督:タイカ・ワイティティ
Rotten Tomatoes 80%,94% IMDb 7.9
もちろん面白いとは思いましたが、みんなほどは楽しめなかったかな。"マイティ・ソー バトルロイヤル"(邦題ラグナロクで良いじゃん!!)でも思いましたが、タイカ・ワイティティの盛り盛りギャグはHeiroにはあまり合わないようです。デヴィッド・リーチの"デッドプール2"と"ワイルド・スピード/スーパーコンボ"観た時も同じこと思いましたね。まああっちはライアン・レイノルズのせいなのかもしれませんけど(笑)。近いうち観直す予定なので、それで評価は変わるかもしれません。まああくまで期待度との落差が大きかっただけです。
10位. "TENET テネット(Tenet)"(2020)
監督:クリストファー・ノーラン
Rotten Tomatoes 70%,76% IMDb 7.6
まず、解釈以前に時間のパズルに穴がありすぎて、マジメに観る必要性が感じられなくなったことが大きいですね。あとエリザベス・デビッキのストーリーもっと上手く料理できてれば最高だったんだけど。あまりの人間ドラマの薄さに、これまで"インセプション"(大好き)や"インターステラー"(超大好き)に感じたキャッチーさが感じられず、テクのみのプログレメタルみたいだなと思っちゃいました。別に今までもノーランは散々設定のツッコミどころとかキャラクター描写の下手さとか言及されてましたけど、以前よりノーラン好きじゃなくなったかも。でもドラマが描けるノーランなんてノーランじゃないんでしょうか。なんだかんだ言って3回観ましたが苦にならなかった程度には好きですよ。お前が勝手に決めてんだろうと言われればそうなんですが、これが10位というのは運命感じますね。ワーストだけど。
9位. "エスケープ・ルーム(Escape Room)"(2019)
監督:アダム・ロビテル
Rotten Tomatoes 51%,51% IMDb 6.4
別にそれなりにハラハラしたし面白かったんですが、それ100万回見たよってなオチで逆にビックリ。それまで色々工夫したシチュエーション作ってたのに、オチ直前で力尽きちゃうんですよね。まあでも、この手のジャンルだとこのオチしかないのかな。続編もあるようですけど、うーん。関係ないですがテイラー・ラッセルって絶対良い子だよね。"WAVES/ウェイブス"観た時も同じこと思いました。
8位. "CLIMAX クライマックス(Climax)"(2018)
監督:ギャスパー・ノエ
Rotten Tomatoes 68%,66% IMDb 7.1
これまでもギャスパー・ノエはあまり合わないなと思ってましたが、やはり。インタビューシーンが長々続くところに"スーサイド・スクワッド"感があり、クラブに興味がないのでダンスや長回しにもノれず、97分という長くはないランタイムにも関わらず冗長に感じてしまいました。ギャスパー・ノエのリトマス試験紙的作品とは言えるでしょうね。あ、でも日本版ポスターの「クライマックス」のフォントは超かわいくて好き(謎のフォロー)。
7位. "人間の時間(Inkan, gongkan, sikan grigo inkan)"(2019)
監督:キム・ギドク
Rotten Tomatoes 20%,N/A IMDb 5.7
キム・ギドク亡くなっちゃいましたね。監督自身の素行……はっきり言うと性犯罪と、作品をどう分けるかという問題がありますが、この映画のあまりな結論にはあんぐりしました。それが男性の業とでも言うんでしょうか。他の映画でなかなか見られない詩情が感じられるので、正直言ってキム・ギドク作品は基本的に好きなんですが、遺作というのを鑑みてもこれはちょっと。
6位. "チャーリーズ・エンジェル(Charlie's Angels)"(2019)
監督:エリザベス・バンクス
Rotten Tomatoes 52%,78% IMDb 4.8
さて、6位以下はおそらく多くの人がイマイチに感じるだろうセレクションになってます。別にオリジナルの"チャーリーズ・エンジェル"のファンでも何でもないですが、単純にアクション映画としてフレッシュさに欠けます。エンジェルの3人、特にエラ・バリンスカがすごく魅力的で、彼女を認知できただけでもめっけもんなんですが、それだけではこの作品を救えなかったな……。これからのエラ・バリンスカの活躍に期待!
5位. "ザ・ブック・オブ・ヘンリー(The Book of Henry)"(2017)
監督:コリン・トレヴォロウ
Rotten Tomatoes 22%,63% IMDb 6.6
おそらく現在では日本で観れなくなっちゃったので、幻の珍作と化した一本。あまりにも飲み込みにくい設定とストーリー展開は一見の価値がありました。そのカオスさは脳が凝り固まった大人には難しすぎるけど、だからと言って子どもには見せられない倫理的な猛毒を含んだ、誰にオススメして良いか分からない、致命的に味付けを間違った作品。"シャークネード"とかの方がターゲットはっきりしてるよね。これがコリン・トレヴォロウの未来を決めなければ良いのですが。何にせよ、機会があればぜひ観て混乱しましょう。
4位. "クワイエット・フレンド 見えない、ともだち(Z)"(2019)
監督:ブランドン・クリステンセン
Rotten Tomatoes 96%,57% IMDb 5.5
幼い少年のイマジナリーフレンドがあまりにも禍々しすぎて、少年の心の闇に迫った方が良いだろと思っちゃった作品。2月に日本公開するイマジナリーフレンド・ホラー"ダニエル"のパトリック・シュワルツェネッガーみたいに、表面上は魅力的な方が良いだろ! 飲み込みづらい設定は焦点をぼやけさせちゃっていけません。記事書いたときはRotten Tomatoesの批評家スコア出てなかったんですが、今では謎の高評価。認めんぞ!!
3位. "ドローン(The Drone)"(2019)
監督:ジョーダン・ルービン
Rotten Tomatoes 80%,29% IMDb 5.7
古き良きホラーのテイストと、あまりにも緩みきったギャグがお気に召すあなたにオススメします。これだけルックがチープな映画は久々に観たなぁ……。狙ってのものとは言え、演技も演出もポンコツだと思います。
2位. "ブラック・クリスマス(Black Christmas)"(2019)
監督:ソフィア・タカール
Rotten Tomatoes 38%,31% IMDb 3.3
今や大監督となったグレタ・ガーウィグと同じく、元々は超低予算インディペンデント映画であるマンブルコア作品を作っていたソフィア・タカール。前作の"ブラック・ビューティー"ではこれまた今や大スターとなったマッケンジー・デイヴィスを主演に据えており、女同士のドロドロ愛憎劇をやっていて面白かったです。今作ではイモージェン・プーツを主演に据え、往年のホラー"暗闇にベルが鳴る"(未見!)をリメイクしています。オリジナルにその要素があるのか分かりませんが、フェミニズムというより男性嫌悪とも言えそうなメッセージを、監督が大して興味のないホラー映画の枠組みを借りて発信している感じがしました。そこの噛み合わなさが強烈で、ジャンル映画を期待した人も裏切るし、そもそもホラーとして全くフレッシュじゃないです。主人公チームのキャストはイモージェン以外は有名じゃないと思いますが良かったです。特に、リリー・ドナヒューがオリジナル主演のオリヴィア・ハッセーを彷彿させる容姿で良かった! 逆に、男性陣は言っちゃ悪いんですがみんなマッチョ志向で女性軽視な感じの人ばかり。よく男性監督が作った映画に男にとって都合が良い、またはステレオタイプな女性キャラクターが出てきて非難されますが、それへのカウンターとして描いてみたのでしょうか。"人間の時間"を観るとそうなっちゃうのもしょうがない気はしますが(笑)。だとしても、1本の映画として面白くないのは問題だと思います。メッセージが誰にも伝わりませんし、クオリティをないがしろにしてまでメッセージを伝えたいなら、映画を用いる必要性がありません。次回作には期待しますが、"ブラック・ビューティー"、"ブラック・クリスマス"ときて、次は"ブラック"何になるのかなぁ(適当)。
1位. "ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷(The Grudge)"(2020)
監督:ニコラス・ペッシェ
Rotten Tomatoes 21%,23% IMDb 4.3
モノクロホラーの監督デビュー作"The Eyes of My Mother"は日本上陸してませんが評価されてて、前作の"ピアッシング"は好きだったしユニークだったので今後に期待してた監督なんですけどね。あまりにも有名な"呪怨"のハリウッドリメイク(またか)なので期待半分不安半分だったんですが、箱を開けてみれば単純な音による驚かし、いわゆるジャンプスケアに頼りきった、ありがちで平凡なホラーに成り下がっており、はなはだ非常にすこぶるガッカリ。あんたもっとポテンシャルある人でしょ! 次回作期待してるんだから、面白いの作ってよね!!
……以上、2020年ベスト&ワーストでした!
良いお年を! じゃない、今年もよろしくお願いします!!