Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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"名探偵コナン 世紀末の魔術師"(1999) Review!

ギレルモ・デル・トロとマシュー・ヴォーンは右目に気をつけろ。

(※"時計じかけの摩天楼""14番目の標的"のネタバレをしています)

 

公式トレイラー


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劇場版"コナン"第3弾。「世紀末のマジシャン」ではありません。「世紀末のまじゅつし」。マジシャンと読むのは第8弾の"銀翼の奇術師"の方です。ややこしいですね。最近"コナン"ばっかだけど、本当に初期コナンすごい。本作はものすごく独特な空気感を持ちながら、前2作に続いて傑作でしたねえ。これこそ、大人向けの作品だと思いましたよ。

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あらすじ

鈴木財閥の蔵から、ロマノフ王朝の遺産であるインペリアル・イースター・エッグの1つ「メモリーズ・エッグ」が見つかった。それを大阪で展示しようとした矢先、怪盗キッドから予告状が届く。コナンはキッドの犯行を阻止すべく大阪を駆けずり回るが、キッドは「スコーピオン」と呼ばれる国際指名手配中の殺人犯に撃ち落とされ……。

 

スタッフ・キャスト

監督は"コナン"を初期から作り続けてきたこだま兼嗣
コナン役は高山みなみ、小五郎役は神谷明、蘭役は山崎和佳奈のお馴染みのキャストが務めた。

 

 

さてさて、本作が傑作たる所以は、名キャラ灰原哀が初登場した劇場版だからで……ウソウソ。超加点ポイントであることは疑いようがないですけどもね! しっかし、"コナン"とは本当にクレイジーな作品ですねえ。だって、大っぴらにショタコンロリコン歓喜させるような設定でやってるんですよ(「頭脳は大人」とは言え)。後々、実際に作中にもコナン大好きショタコンの世良ちゃんも出てきますしね。その上、"ゲーム・オブ・スローンズ"より人死ぬのにコメディ色強くて笑えるんですよ。おかしいでしょ!! どう考えてもそんな作品は好き者向けの劇薬ですよ。話だけ聞いてるとブラックコメディ以外の何者でもないでしょ? しかし、実際は子どもでも楽しめる(親がどう思ってるかは知らない)ラブコメミステリーになってるんですなぁ。全てが奇跡的なバランスで成り立っていて、ギリギリ崩れないジェンガというか、ピンと張ったコップの水というか。クレイジーでしょ? 灰原は特に活躍はしませんが、おっちゃんを委縮させるほどの怒声と、終盤、絶体絶命のコナンを心配し小声で「バカ……」と言ってるのが聞けます。当時劇場で観た人はここだけでもチケット代の元が取れたってもんでしょう。灰原以外にも、Heiroお気に入りの服部平次遠山和葉の大阪コンビが出てきますが、ストーリーには大きく関わりません。その辺りは第6弾の"迷宮の十字路"までおあずけですかね……。ぐぬぬ

 

本作は歴史のIFものとなっています。しかもフィーチャーされてるのがロシアのロマノフ王朝。渋い。そういう所も大人向けな点ですね。"コナン"ではたまに英会話は登場しますが、本作ではロシア語が出てきます。中々日本のエンタメでここまでロシアに触れることはないでしょ。おっちゃんが「ボスポミナーニェ(ロシア語で思い出のこと)」とか言うの一生のうちにこの1回だけでしょ(笑)。この挑戦は偉い。まあ、子どもの頃観てよくは分かってなかったですが、本作は劇場版の中でHeiroの一番のお気に入りだったので、子ども的にも楽しめる要素が色々あったんだなぁと。「バルシェ、肉買ったべか(ヴァルシェーブニック・カンツァー・ベカ=The Last Wizard of the Century=世紀末の魔術師)」のフレーズもずっと覚えてたし。本作は、他の劇場版とは一線を画す独特の雰囲気をまとっていますが、それはやはりロシアと歴史の要素が絡んでいるからかなと思いますね。

最も子ども心をくすぐるのはやはり、そのアドベンチャー感ですね。テレビシリーズでもよくあるのが、「不思議な館」の話です。館に様々な仕掛けがあり、その謎を解いて隠されたお宝を探すというエピソード。本作では館でなくて城ですが、今回の鑑賞でHeiroの心の中の少年がガッツポーズしてました。"ザ・マミー/呪われた砂漠の王女"トム・クルーズが「Where's your sense of adventure?(お前の冒険心はどこに行ったんだ?)」と言ってましたが、トム!! ここにあるぜ!! 魔鏡に次の目的地が記されているのを発見した時のワクワクとかさぁ……。メモリーズ・エッグに隠されたニコライ2世一家の写真が映し出されるシーンの感動とかさぁ……。前2作も音楽の使い方が秀逸でしたが、本作もそうでした。素晴らしい……。物語の舞台も大阪から豪華客船、謎の古城と次々に移っていくので、退屈しない作りになっています。

 

大人になって観返してグッと来たのは、子どもの頃に分からなかった歴史ものの部分。別に歴史に特別興味があるわけでも、ロマノフ王朝に詳しいわけでもないですが、思いが時を超えて現代に伝わる、みたいな話は大好きです。"クラウド アトラス"がオールタイムベストな人間ですから。カッコ良すぎるタイトルの「世紀末の魔術師」、本作の公開時期は20世紀末でしたが、インペリアル・イースター・エッグが作られていたのは19世紀末。何百年も前だとちょっと想像しづらいですが、100年前ってのはロマン感じますね。メモリーズ・エッグは51番目のエッグとなっていますが、実際にはエッグは50個しか作られていないようです。ロマン。また、公開当時は皇帝一家が銃殺されたロシア革命での生死が不明だった皇帝の娘マリアについて、劇中では生き延びて日本に渡ったということになっていますが、21世紀に入ってからマリアも一家とともに銃殺されていたことが明らかになったとのこと。本人の写真を見ると、劇中に登場するマリアの子孫(おそらく)である香坂夏美のような優しそうな美人ですが、19歳でこの世を去ったそうです。歴史を調べるとかなり残酷な真実が明らかになりますが、本作がマリアに「あったかもしれない」幸せな最期を与えられたことについては、フィクションの存在意義を強く感じます。クエンティン・タランティーノ"ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド"シャロン・テートをマンソンファミリーに殺させなかったようにね。マリアの真実が明らかになる前となった後では、本作を観た感想は大きく異なるでしょうね。今観ると非常に切ない作品です。以前はロマンの方を強く感じる作品だったでしょうが。

 

犯人については、やはりあんまり隠そうとしてません。浦思青蘭がスコーピオンですが、ご丁寧に本人が教えてくれた名前の中国語読み「プース・チンラン」が「ラスプーチン」に似てるのは多分子どもでも気づきます(笑)。アナグラムなので確実に偽名でしょうが、それだけラスプーチンをリスペクトしてるんですね。しかし、おっちゃんがラスプーチンを「世紀の大悪党」と言ったことにキレて殺そうとしてますが、ラスプーチンをリスペクトしててそんな行動をとるということは、おっちゃんが言ってることを裏付けてしまうのでは……(笑)。それより今回調べて分かったんですが、ラスプーチンにもマリアという娘がいたようです(後からマリアに改名したようだけど)。スコーピオンの素性がラスプーチンの末裔ということ以外分かりませんが、そのマリアのひ孫だったりすると、香坂夏美とは陰と陽のマリアのひ孫同士という関係になりますね! そういう話でも面白かったかも。劇中の「世紀末の魔術師」は香坂夏美の曾祖父、香坂喜市のことですが、ラスプーチンはよく「怪僧」と称されます。ある意味こっちも「世紀末の魔術師」なわけですから。

スコーピオンは、コナンとの最終対決で、コナンの口車にまんまと乗せられて銃の最後の一発を無駄にしてしまいます(ドジ♥)。この時、スコーピオンがこれまで殺人を犯す際に毎回してきたように、ラスプーチンが殺された時に撃たれた右目を狙うんですが、ここにも前2作の犯人、森谷帝二や沢木公平が持っていたような美学を感じますね。劇中では、ラスプーチンの無念を晴らすためと説明されてますけど、ここまで来れば殺人鬼としての美学のようなものでしょう。そう言えば、コナンは阿笠博士から受け取った硬質ガラス製のメガネをかけてますが、それが銃弾を弾くのはまあ良いとして、メガネ全く吹っ飛ばないんですよ。すげえ(そこじゃない)。蝶ネクタイ型変声機もキック力増強シューズも大活躍します。ターボエンジン付きスケボーも。本当にねえ、"コナン"に出てくる特製メカはイケてますよ。シンプルなだけに、上手く使ってるコナンを見ると痺れます。特にキック力増強シューズは、作品にアクション成分を加える大貢献をしてますね。蝶ネクタイ型変声機で知り合いでもない人の声を瞬時に出すのはどうやってるのか不明ですが……(笑)。声紋分析能力とかないはずだけど……。

 

本作が公開された時期は、蘭がコナンの正体を新一だと強く疑っていた頃で、本作にもそれが反映されています。うっかりコナンは自分の誕生日を正直に蘭の前で言ってしまうんですね。本当に名探偵なのか(笑)? 物語の前半で、コナンのおみくじに「秘密が明るみに出る」と書いてありますが、実際は蘭ではなくキッドにバレました。キッドはスコーピオンに撃ち落とされた後は白鳥刑事に化けてましたね。"時計じかけの摩天楼"では白鳥刑事が犯人なんじゃないかと思わせていましたが(そう思ったのはおっちゃんだけかも(笑))、本作の白鳥刑事はかなり怪しいです。まあスコーピオンとはさすがに思わないけど(笑)。いつの間にか鈴木会長からエッグ借りて(盗って?)きてたり、コナンにものすごい視線向けてたり。途中、高木刑事の右目の上の絆創膏について触れられるシーンがありましたが、あれはミスリードですね。キッドはスコーピオンに右目を狙われてモノクルを割られてますから。でもよく考えれば、顔を変えてるんだから傷は露出しないか(笑)?

蘭に詰め寄られたコナンが観念し正体をバラそうとする所で、新一に化けたキッドが現れますが、そこで一気にコナンが偽物のように感じられるのが言葉にならないほど素晴らしい演出ですね(実際ちょっといつもと違う絵柄の作画になるからというのもあるかも(笑))。やはり"コナン"は新一の物語なんですよ。このシーンも本作を独特な作品にしてると思いますね。キッドとの、敵とも味方ともとれるこの関係が実に良い。

 

コナンは、キッドから「お前を助けた謎が解けるか」と問われ、「んなもん謎でも何でもねえよ」とハトを助けたお礼であることを見抜きますが、そんなコナンに言いたい。キッドの正体が誰かなんて、んなもん謎でも何でもねえよ。ハトと言えば白い鳥。そんな名前の人物なんて、1人しかいねえだろ?

 

 

★★★★★★★★☆

Rotten Tomatoes  N/A,N/A

IMDb  7.5

"ヘルボーイ"でも"キングスマン: ファースト・エージェント"でも、ラスプーチンは悪役なのよね。スコーピオンさんこっちです! ……あ、最後の最後に蘭の空手のシーンありました(笑)。