Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"ブラインドスポッティング(Blindspotting)"シーズン1(2021) 完走(感想)。

「盲点」知らずに死ぬは人生の汚点。

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公式トレイラー(英語版のみ)


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今日はちょっくら趣向を変えていこう。ドラマ版"ブラインドスポッティング"を観たから書いてみよう、感想、二の足じゃなく韻を踏んで書こう。難しすぎたら? そんときゃ退こう。ホトトギスが鳴かなきゃ? そんなら待とう。

本作は多分、映画版の続き。傑作だった分、期待も高すぎ。Amazonからアクセスできるが、別の配信サービスSTARZPLAY(スターズプレイ)作品だったのが運の尽き。新たに払わなきゃ600円毎月!! ネトフリ、アマプラ、U-NEXTにもすでに加入してるのに殺す気? でもこれ観るために入ったよ、やる気ありすぎ? 1週間無料体験できるからね、あなたもどう? まあ強制はしないけど、蓼食う虫も好き好き。

 

そもそも、この記事の試みの心は本作の字幕。舞台となるのはカリフォルニア州オークランド、治安は最悪。映画版の主人公はダヴィード・ディグス演じる黒人のコリン、でもドラマのシーズン1には出てこない、これって改悪? 代役でも立てれば、と思ったら最後に声だけで出てきた、まさにチョイ役。映画版の白眉はコリンのラップシーン、そしてそこの字幕。ちゃんとセリフのように韻を踏んでた……意訳? そうかも、でもその心意気に感銘を受けたんだ、ご利益でもありそうなほどに。さて本作の字幕はいかに? あんまり韻が再現されてない、本当に。「小切手切って」くらいはあったけど、その他は特に。ろくに訳されてないに。ひどい訛り? そりゃコックニー。イライザ、怒りを鎮めてよ、錨だけに。Calm your anger, like an anchor.そこでこのHeiroがやったろうと筆を執り。ラップなんてほとんど聴いたことないのに! 邦楽は日本語、自分たちのテリトリー、なのにライミングしないストレートな歌詞ばかり。しかし、歌詞も「詩」たるべき。人に言う前に己が示す、そこでこのタイミングでこうやってタイピングしてるんだよ、Can you see?

 

主人公はコリンに代わり、ジャスミン・シーファス・ジョーンズ演じるアシュリー。白人でコリンの友人マイルズの人生の相棒、つまりバディ。マイルズはやらかして刑務所、アシュリーは息子のショーンと自宅を追い出されマイルズ家に居候、それが始まり。

映画版にラップミュージカル的な演出が多用されてたように、本作も演出が奇妙。異様なシーンが多く、でも知って納得、本作のクリエイターでもあるダヴィード・ディグスはあの"ハミルトン"トーマス・ジェファーソン役(ジャスミン・シーファス・ジョーンズはペギー・スカイラー役。さらに本作で脇役として出演してるアンソニー・ラモスはアレクサンダーの息子フィリップ・ハミルトン役。そしてラテンミュージカル"イン・ザ・ハイツ"の主役)。アシュリーはデッドプールよろしく第四の壁破り、モノローグ、つまり一人語り。刑務所のマイルズがなぜかアシュリーの妄想として登場したり、唐突にダンスシーンに突入したり。観ていて飽きが来ない(実際まだ暑い、秋は来ない)。こないな感じでええんかラップって。マイルズ役のラファエル・カザルもクリエイターを務めていて、登場させづらいからってアシュリーの妄想を借りてちょくちょく出てくるのが面白くて。

 

それはさておき、すごいのはクリエイター2人が主人公のはずの自分たちを脇に置き、アシュリーを主人公に据えてもオーキードーキーなその姿勢。「2人を見せい」てな観客の上を行き、満足させてしまうその鮮やかな手口。他のキャラクターも皆魅力的。大御所ヘレン・ハント演じるマイルズの母レイニー、全てを包み込む優しさが素敵。でも聞き分けのない子にはちゃんと打撃。ジェイレン・バロン演じるマイルズの妹トリッシュが一番のトリックスター、まさにロキ。嘘つきじゃないけど、この女、凶暴につき。

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批判的にじゃなく、ジャッジせずに性労働者を描いてるのも印象的。でもそのトリッシュをきっちりビッチ(嫌な女)にも描いてて、内容が豊か、つまりリッチ。トリッシュ、たまにフローレンス・ピュー、またはオリヴィア・クックっぽく見える。似てないって? それがHeiro流。前にもそんな映画あった? そりゃ"カムガール"

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シリアスな話のはずなのに、テイストは常にコメディ。「ここ笑うとこ」みたいなわざとらしさもなし……この対極はタイカ・ワイティティ?  どっちが好きかと聞かれたら、そりゃ"ブラインドスポッティング"の方が好み。飛行機じゃ常にエコノミー。実際どっちが人々に好まれるのかを知るのは神のみ。あんまり批判するのはよそう、明日は我が身と予想……。別にタイカが嫌いなんじゃない、期待が高すぎたみたい。"ジョジョ・ラビット"へのささやかな小言さ、って逃げてみる姑息さ。

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物語のゴールは不明瞭。だからって多くの人に観られないのは不名誉。一般にあんまり認知されてないのはSTARZPLAYなんて新しいプラットフォームのせいよ。Heiroも今回初めて知ったし、知らなくても無理ねーよ。でもこの記事で興味持ってくれる人が増えたら、そりゃこの上ない栄誉。ダヴィードとラファエルは今後のエンタメの帝王、語り継がれるだろう未来永劫。墓場からクレイドル……逆か、韻にかまけて意味が疎かになるのはご愛敬。さすがに長いのでそろそろ閉口、軽躁気味の試みだったけどスベってもHeiroとしちゃ軽症。敬称は略で構わぬ現状。好物はチョコレート? そう、ご名答。名刀正宗も真っ青、快刀乱麻の解答。ホントにここらでチェックメイト、なくそうヘイト、そうだ京都へ行こう。