Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"名探偵コナン ベイカー街の亡霊"(2002) Review!

お前が舵を取れ!(by 長渕剛)

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公式トレイラー


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幼きHeiroの心に残った劇場版"名探偵コナン"の最高傑作、それがこの"ベイカー街の亡霊"でした。十数年ぶりに観返してみると……最高傑作とは言いがたいかなぁ(笑)。割と色んなことが気になっちゃった。普通に良い映画だと思うし、劇場版だからこそできる設定で楽しいですけどね。

 

 

あらすじ

天才プログラマー少年、ヒロキ・サワダが自殺した。その直前、彼が完成させた人工知能ノアズ・アークは一般の電話回線に逃れた。2年後、コナンたちはヴァーチャルリアリティゲーム「コクーン」の完成披露パーティに招かれるが、開発者の樫村が殺される事件が起きる。樫村の友人とした招かれていたコナン(新一)の父親、優作が事件解決のため協力を申し出るが、「コクーン」の体験プレイを行っていたコナン他大勢の子どもたちは突如現れたノアズ・アークの人質にされ……。

 

スタッフ・キャスト

監督は"コナン"を初期から作り続けてきたこだま兼嗣

コナン役は高山みなみ小五郎役は神谷明、蘭役は山崎和佳奈のお馴染みのキャストが務めた。

 

 

もしかしたら、ヴァーチャルリアリティについての映画を観たのは当時が初めてとかかもしれませんね。人工知能についても。今でも"レディ・プレイヤー1"とかありますけど、本作から20年経った今でもあのレベルまでは到達してません。まだ夢の世界ですね。

heiro-chloe.hatenablog.com

 

一番最初に気になったのは、ヒロキくんの経歴を説明するニュースのノアズ・アークのくだりで、名前の由来となったノアの箱舟の説明が入るとこ。そこアメリカなんだから説明要らなくない(笑)? 樫村さんの部屋はイジメかってレベルでヘンなとこにあるし。トマス・シンドラーが犯人なのは初めから観客に明らかにされてるので、そこんとこのミステリーはありません。動機が何なのかを追いかけるだけです。ま、ゲーム内の「オールド・タイム・ロンドン(名前が最高)」をプレイしているコナンたちのパートがメインですから、あまり現実世界の事件に時間をかけられなかったのは分かります。優作パートだけ繋げたら、かなり短くなっちゃうと思いますし。シンドラー殺人スキルありすぎだしね(笑)。クソガキである諸星くんらのサッカーシーンとかほんと不快だよね。あ、それは良いとこか(笑)。

少しもったいないのは、この設定で主要キャラを退場させることが可能になったのに、少年探偵団の最後が雑なとこ。元太も光彦も歩美も、皆同じ場面でやられちゃうんですよね。しかも大体不注意で。光彦と歩美が暴漢にビンで頭殴られるシーンは、一瞬「これギャグか?」と思っちゃった(笑)。クソガキの1人、菊川くんが改心するとこは良いですがね。「オールド・タイム・ロンドン」がホームズをフィーチャーしたモードなだけに、色々とホームズに関する単語が出てきますが、その解説役は蘭。あなたホームズオタクでしたっけってくらい喋ります。コナンよりも喋ってたかも? 前に新一が話したのを覚えていた、って設定なんでしょうけどね。ちょっと気になりました。だってコナンも不審に思ってるような描写あったもん。脚本家によるセルフツッコミだったのかな。

 

とはいえ、この映画良いとこたくさんあります。オープニングで一瞬有希子さんのキャリア振り返りがありますが、まずそのサービス最高ですね。有希子さん本人の代わりに(ほぼ同じ人格ですが)アイリーンが登場するのも良い。コナンと優作のアイコンタクトもアツいですし。蘭に参加バッジをあげる園子はやっぱり良い子だし、あざとい子ども演技かます灰原も素晴らしい。何だかんだ言って、キャラクターの魅力は十分出ています。脚本家がコナンチームの人じゃないらしいんですけどね。だからこそ、ゲーム内なので阿笠博士のお助けメカが使えないなんていつもの裏返しの発想が出るんでしょうね。新鮮です。ゲームの言語設定が最初英語になってて、途中から日本語に切り替わるのも演出として面白い。全員がゲームオーバーになると特殊な電磁波で脳を破壊されるなんて話も、"マトリックス"とかからの影響ですかね? ラノベとかでもそういう設定が使われてたりしますが。ボスのジャック・ザ・リッパーが最初女装して美女として出てくるのも、一部の層にストライクな設定じゃないですか(他人事ではない)? 最後にコナンが諦めかけるのも新しい。

 

この映画ねえ、よく考えたら結構重い話ですよ。ゲームだからこそ可能になってますが、終盤蘭は半ば自殺してますからね。序盤のヒロキくんもそうですが、全てが終わりシンドラーが逮捕されてノアズ・アークがとる行動はまた自殺ですよ。ノアズ・アークはヒロキくんの人格を持ってますから、ヒロキくんは2回自殺したことになります。まだ10歳なのに!! 調べてみると、本作の脚本家は公開から2年後に自殺してしまっているようです。悲しい……。

 

シンドラーが実はジャック・ザ・リッパーの子孫で、血の呪いと日本の世襲制をテーマにしてるのが面白いですよね。「おまえの手で漕いでゆけ(by 中島みゆき)」ですよ。ヨーソロー。ノアズ・アークが化けていた諸星くんだけは成長の機会が与えられなかったんですけどね。しくしく。

 

 

★★★★★★★☆  7.5/10

Rotten Tomatoes  N/A,90%

IMDb  7.8

"緋色の弾丸"公開記念の期間限定配信だったのか、劇場版が各配信サイトから一気に消えました。号泣。