Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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"名探偵コナン 天国へのカウントダウン"(2001) Review!

日本人は米が好き。

(※"時計じかけの摩天楼"のネタバレをしています)

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公式トレイラー


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劇場版"コナン"第5弾。初期コナンは傑作揃いと言い続けてきましたが、実は本作は昔からそんなにお気に入りではなかったんですよね。今回観直しても、その印象は残念ながら変わらず。面白くはあるんですが、前4作と比べると分が悪いかな。人気の作品だとは思いますけどね。

 

 

あらすじ

現場に割れたお猪口が残された連続殺人事件が起こる。コナンたち少年探偵団がその捜査を進める裏で、何者かと連絡を取っている灰原の姿が。西多摩市のツインタワービルで行われるパーティに呼ばれたコナンは、宿敵の黒の組織のジンの愛車であるポルシェ356Aを目撃。組織が事件にどう関係しているのか、灰原が連絡している相手は誰なのかを明らかにしようとするが……。

 

スタッフ・キャスト

監督は"コナン"を初期から作り続けてきたこだま兼嗣

コナン役は高山みなみ小五郎役は神谷明、蘭役は山崎和佳奈のお馴染みのキャストが務めた。

 

 

本作は2001年4月の映画ですが、ちょっと同年9/11の同時多発テロを思わせるような内容で驚きました。ツインタワーが爆発しますからね。"時計じかけの摩天楼"の犯人である森谷帝二の弟子が出てきて、シンメトリーじゃないので無事爆破されます(笑)。犯人はその人じゃないですけど。本作は"時計じかけの摩天楼"をセルフオマージュしたような作品で、ビル内でのアクションを増やし、より"タワーリング・インフェルノ"みたいになってます。前半はミステリー、後半はパニックアクションになりますね。前作"瞳の中の暗殺者"では水が印象的に使われてましたが、こちらは火が主役です。また、黒の組織が登場した初の劇場版作品でもあります。灰原がコナンたちを裏切っているかもしれないというミスリード付きで。

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個人的にはそんなにお気に入りではないと言いましたが、面白いアイディアが色々出てくる映画ではあります。10年後の顔予想マシンもその1つ。コナンと灰原の場合は機械がエラーを起こし、灰原が「10年後は、2人ともこの世にいないってことかもね」と呟きます。予言マシンじゃないんだから論理的にはおかしいセリフなんですが、意味深かつ灰原の皮肉屋な性格が出ていて良いです。蘭の顔予想もしますが、観客には結果を見せてくれません。いけず。園子の10年後も別に悪くないと思うんですが、本人は気にしてる様子。これが元で、髪を灰原と同じウェーブヘアにします。ウェーブ園子は確かにいつもより良い……というかいつもの髪型が微妙なんですよね(笑)。何にせよウェーブ最強説がここで立証されます。そのせいで灰原と間違われジンに狙撃されるんですが。ジンはイキってるくせに結構ポカをやらかすんですよね。そりゃ顔まで詳しく見えない距離とは思いますけど……狙撃の腕は確かなようだからまあ良いや。ジンの狙撃に気づいたコナンが「園子ねーちゃんパンツ丸見え!!」と叫ぶのと、その後エレベーターが止まり園子が慌てふためくのが本作で一番好きなシーンです(笑)。悪いなジン。それは別ジンなんだ……。

歩美が、コナンが側にいると自分の鼓動で時間が正確に分かるというのも良いですね。30秒をピッタリ計れてますが、これって鼓動2回で1秒をカウントしてるんですかね? そうだとすると心拍数は120/分。結構ドキドキしてますね(笑)。歩美がコナンと結ばれる未来はないでしょうけど……。

 

犯人である如月峰水は前4作の犯人たちと同じく、仕事に対する美学的な動機で事件を起こします。自宅と富士山の間にツインタワーが建ち、そのせいで何十年も描き続けてきた富士山の景色が汚されたためです。この辺はもう伝統芸ですね。ラスト、爆風でツインタワーのもう一方のビルに車で飛ぶシーンは世界一長い2秒になってますが、スカッとします。コナンのドライブテクはやはり「ハワイで親父に」習ったそうです(笑)。本作はよくできてるとは思うんですが、前4作まであったウルウルポイントが個人的になかったのが痛かったですね。ちょっと情緒的な描写が薄くなってアクション方向に振り切ったというか、その部分があっさりしてましたね。蘭とのシーンも少なめで、灰原と少年探偵団のシーンに時間を割いたのが大きな原因かな? 「席(居場所)がない」とこぼす灰原に居場所を与えるのが本作の役割でもあるので、それはしょうがないですが。本作のように、初期の灰原は組織に狙われるとすぐ自殺行為しがちでしたね。テレビシリーズでも爆弾が仕掛けられたバスから逃げようとしなかったり(本作と同時期)。そもそも、組織を裏切った際にアポトキシン4869を飲んだのは自殺のためでしたし。元々暗くてミステリアスだったのが最近では明るくなり、どんどん「灰原」というより「哀ちゃん」化してきてます。テレビシリーズと劇場版の世界線が同じかどうかはややこしい問題ですが、少なくとも観客には、本作を灰原の変化の最初のきっかけとして見ることは可能です。タワーに残ろうとした灰原を、食いしん坊の元太が米粒扱いして助けますね。灰原は、キャラ人気投票でも正ヒロインの蘭を押しのけて1位に君臨することもしばしば。それが全てを物語っています。灰原よ、安心しろ。日本人は米が好きだぞ(笑)!! 灰原の席は、ここにちゃんとありましたとさ。

 

 

★★★★★★★  7/10点

Rotten Tomatoes  N/A,N/A

IMDb  7.6

日本人はウェーブも好き……?