Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

ムック/"葬ラ謳"(2002)

日本が世界に誇る絶望ロック。 

 

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茨城出身のヴィジュアル系ロックバンド、ムックの2ndアルバム。

ガチャピンの隣にいるヤツではありません。って何万回も言われたろうな。高校生の時に初めて聴いて、当初はあまりの歌詞の暗さに面食らいましたが、段々癖になってきました。基本的に歌謡曲的(フォーク的?)なメロディに孤独や自傷・自殺などについての痛切な歌詞が乗っている曲が多いですが、それをヴォーカルの逹瑯(たつろう)が実にエモーショナルに歌い上げてくれます。生命力溢れるヴォーカル大好きなんだよなあ。ヴィジュアル系だけに、この頃は歌い方に相当癖がありますが、めちゃめちゃ味染みてますよ。大根も茶色に。ウマウマ。喉壊しそうな歌い方ですが、それが完全に歌詞の世界観に合ってて、表現力もピカイチ。ヴォーカルにとって本当に大事なのは、単純に正確な音程を出す力よりも表現力だと思うのねん。

ムックは途中までは暗い曲ばっかだったんですが、明るい曲も増えていきました。それでも歌謡曲的な日本人好みのメロディは失われていなかったので変わらず好きだったんですが、徐々にエレクトロなダンスミュージック要素が強くなり、Heiroの好みから離れていきました。歌詞もポップになったし、バンド名表記が「ムック」から「MUCC」に変わったりしてね。ムックはベスト盤を出す時、2枚組で明るい曲が入ってる方を「ベスト」、暗い曲が入ってる方を「ワースト」と名付けます。ハイセンス!! 昔ながらのムックファンは「ワースト」こそベストと思うわけです。ワルくて最高なんで。しかし、比較的最近のアルバム"THE END OF THE WORLD"の中にはタイトル曲"THE END OF THE WORLD"の他に"World's End"という曲が入っていたり……ちょ、ちょおま、かぶ……ちょ……ちょ!!(笑) しかも"ENDER ENDER"という曲まで。どんだけ終わるんだ!

 

Heiroは本人たちがやりたい音楽を突き詰めれば良いじゃんと思うタイプの人間なんで、バンドの方向性と自分の好みが交わらなくなってくると切なくなります。もしそうなったら、追いかけるのは止めてひっそり昔の曲を聴くだけ。それでここ数年の作品も聴いてなかったんですが、またインディーズに戻ったみたいです。昔のムックが帰って来たのか!? チェキするべきか!? あんまり懐古趣味はシュミじゃないですが、とりあえず今回は「古き良き」ムックを。

 

 

#1. "ホムラウタ"  ♥

短いインスト。メロディは割と明るめだが、段々狂気を孕み始める。ハーモニカと湿った音たちがホラーっぽさを演出している。

 

#2. "絶望"  ♥

個人的に二字熟語の曲名にカッコ良さを感じるのだが、それを裏切らないキラーチューン。逆に言えばこの曲が苦手ならムックは合わないかもしれない。ムックの暗い曲にはどれも絶望の感情が含まれているので、それを曲名に冠したこの曲はまさにムックの本質を体現していると言える。ヘヴィなリフがクールで、(心が)イタイ歌詞が早口でまくしたてられる。

 

#3. "幸せの執着"  ♥

"絶望"よりポップな、昭和歌謡的メロディの曲。このアルバムの中では聴きやすい部類。

 

#4. "君に幸あれ"  ♥

しとしと降る雨のようにスローで鬱々とした曲。サビで爆発し絶叫交じりの歌声が響く。逹瑯の喉が心配になるが、この声がリスナーの心を震わせる。

 

#5. "僕が本当の僕に耐えきれず造った本当の僕"  ♥

ポエトリーリーディングのようなAメロで始まり、サビで疾走。あまりメロディの起伏がないが、その分歌詞のストーリー性が強い。最後にメロディアスになる。

 

#6. "ママ"  ♥

本作中で一番軽快でキャッチーな曲だが、歌詞はやはりショッキング。

 

#7. "暗闇に咲く花"  

スローで、ヘヴィな曲。胃もたれするので、これはあんまり好きじゃない(笑)。

 

#8. "嘘で歪む心臓"  ♥

キャッチーで非常にノリの良い歌謡曲的なメロディのナンバー。おそらく本作で一番聴きやすい。

 

#9. "およげ! たいやきくん"  ♥

誰もが聴いたことあるあの曲をまさかのカヴァー。ヘヴィなロックアレンジだが、元々ムックの曲なのかと思えるほどハマっているし、想像以上にカッコ良い。

 

#10. "前へ"  ♥

曲としては軽快で明るいが、他の曲と比べて浮いておらず、アルバムの一貫性は失われていない。

 

#11. "黒煙"  ♥

疾走感のあるヘヴィなナンバー。Aメロのヴォーカルパートはメロディがないが、サビでメロディアスに。一瞬テンポが落ちてから徐々に速くなるのがたまらない。

 

#12. "スイミン"  ♥

ちょっと変わったメロディで、プログレッシヴなテイストの曲。しかしメロディアスなサビは忘れずに用意してくれている。非常に不穏な叫びで幕が下りるので不安になる。

 

#13. "帰らぬ人"  ♥

かなり物悲しいフォークソング。これ平成の曲?(笑) Heiroはこういうレトロな曲を現代的に聴かせてくれる曲が好き。

 

#14. "ズタズタ"

スローでメランコリックな曲。最後の最後までブレずにこの方向性を貫き通すのはすごい。

 

 

★★★★★★★★★  9.0/10点

やはり色褪せない名盤。MUCCを聴く前にまずムックを聴こう!