Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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谷山浩子/"まっくら森の歌"

どんなホラーよりホラー

みんなのうた」でその名を知っている人も多いでしょう。怖い曲として超有名な、谷山浩子の"まっくら森の歌"。非常に美しく寂しい旋律で、抽象的で難解な歌詞。しかしもう少しで理解できるような気もする。

Heiroは谷山浩子の怖い曲について、「くねくね」的な恐怖を抱いています。「くねくね」とは都市伝説に登場する正体不明の存在で、ふと遠くに見えるくねくね動く何かのことです。その正体を理解してしまうと気が触れると言われています。

この曲もそうですが、谷山さんの曲には矛盾した表現が頻出します。「きのうはあした」とか、「早いは遅い」とか。しかし、おそらく谷山さんの中ではそれは矛盾ではないのです。Heiroがこの本当の意味を理解した瞬間たぶん発狂しますが、谷山さんに狂気は感じられません。むしろ非常に純粋な人なんだろうと思います。それがまた怖いのですが。

ルイス・キャロルの"鏡の国のアリス"の中で、「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」という一見矛盾した文章が出てくるらしいですが、それは非常に示唆に富んだ面白い言葉としか思わず、恐怖は全く覚えません。

他の曲でも、Aと言った後にすぐそれと逆の意味のBと、それがさも両立しているように素知らぬ顔で歌ったりしています。Heiroが日常で恐怖する瞬間のほとんどに谷山浩子が関わっています。この文を書いている間にものすごい鳥肌が立ってきました。

 

森ってよくメタファーに使われますよね。"イントゥ・ザ・ウッズ"では、タイトルの「森の中へ」行くことは危険も多い人生を生きていくことのメタファーとして用いていたと理解しています。この曲では森は深層心理を表しているのでしょうか。まあ曲中で「まっくら森は心の迷路」と言っているんですが、他の表現が何を指しているのか分かりません。そもそも言語化不可能な領域について話しているのかも知れませんけどね……。

 

何にせよ、ここまで人の気持ちに影響を与える作品を作れることは驚嘆に値します。彼女こそ本物のアーティストだと思います。Heiroは邦楽でもあまり歌詞を聴いてないことが最近判明しましたが、谷山浩子に関しては違うのです。