Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"ラブ・エクスペリメント(Hippopotamus)"(2018) Review!

ポカホンタス……じゃない、このオタンコナス!

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公式トレイラー


ラブ・エクスペリメント

 

未体験ゾーンの映画たち2021で公開された作品です。Heiroの個人的期待度は第4位だったんですが、結論から言えばムムムでした。ちょっとねー……。

 

あらすじ

ルビーは目が覚めると膝の靭帯を切られており足が動かせず、自身に関する記憶もない状態で密室に監禁されていた。犯人の男はルビーに鎮痛剤を手渡し、「僕を愛するまで監禁し続ける」と言い放つ……。

 

スタッフ・キャスト

監督はこれが長編デビュー作となるエドワード・A・パーマー。

ルビー役には、"ローグ・ワン/スター・ウォーズ ストーリー"レイア姫の顔以外を演じたイングヴィル・デイラ。他。

 

 

まず、イングヴィル・デイラは安定の可愛さでした(大事)。可憐ですね。やはりちょっとフェリシティ・ジョーンズに似ています。レイアというプリンセスを演じただけあって、ダムゼル・イン・ディストレス(囚われの姫君)にはピッタリの人材です。

ルビーはトムという謎の男に監禁されていて、特に手は出されませんが部屋からは出してもらえません。食事は与えられるし、膝の靭帯を切られているのでトイレの介助と風呂代わりに体を拭くことはしてもらえますが(ヘンタイめ)。しかも、ルビーが「私をレイプしたの?」と聞くと不機嫌になって否定します。キモいです。トムは非常に不愛想だし、鼻ばかりすすってて印象悪いし(Heiroも鼻は弱いので人のことは言えないが)、監禁された理由も分かりません。

 

ルビーはトムにあからさまな反抗はせずに、徐々に心を許していくフリをします。ある日、ルビーは監禁されてからの記憶も失くし、トムがうんざりしたように「愛するまで監禁し続ける」と最初にしたように説明します。ルビーの頭には血の滲んだ包帯も巻かれており、今も記憶能力が不安定なことが示されます。そのうち、ヒマだから本持ってきてと言うと聞き入れてもらえます。その本を読むと、過去に読んだことがあると気づきますが、あるページに「DON'T TRUST HIM(彼を信用するな)」と落書きが。"メメント"っぽいですが、言われなくても信用できませんわな。

 

トムを受け入れたフリをしていくと、2人で食事をすることに。そこでまたルビーの記憶が一部蘇り、何と過去2人は付き合っていたことが判明します。ただのキモストーカーではなかったのですね。よりトムを信用できるようになったルビーは、密室の中でする経験に関連した記憶の欠片を集めていきます。

そして、ついにトムの語ったこれまでの経緯が観客の予想の斜め上を行きます。曰く、2人が付き合っていた頃、ルビーは自宅で同居人のニックという男(唐突に出てくる)にレイプされた。間に合わなかったがトムが駆け付け、ルビーを襲っているニックを殴って殺してしまった。ルビーはそのショックで記憶喪失に。トムは殺人が露見するのを恐れてルビーを連れ孤島の廃墟へ(なぜ)。ルビーは長く睡眠をとると記憶がまっさらな状態に戻ってしまうので、トムはあらゆるシチュエーションを試しながら、記憶を戻す方法を探っていた。そして辿り着いたのがこの密室の設定であった。全ては愛のため……。とか何とか。

トムよ。怖いのは分かるが、事情を話せば事実は証明できるんだからまず出頭しろ。そしてルビーは病院に連れていけ。そしてなぜ靭帯まで切る?

 

観客の脳内に?マークが浮かんだまま、2人のラブシーンへ。まあ方法は悲しいほど間違ってたとはいえトムは悪人というわけではなさそうだし……。と思ったら、朝になり隣で眠るトムを見たルビーは隠し持っていたガラスの破片で彼を切りつけ大怪我を負わせます。またルビーは記憶を失くしてしまったんでしょうか? そのままルビーは密室を脱出し、ボートで島を出ようとします。ここで、身勝手な愛を宣う男をやっつけて解放されていく女性を描いたフェミニズム映画なのかと思ったら、ボートに乗ろうとして途中で気絶してしまいます。気が付くと病室に寝かされていて助かったかと思いきや、医者のフリをしたトムがそこにいて、トムのカメラ目線でエンディングになります。

 

この映画は何がしたかったんだ? ルビーが男と同居してるのもよく分からないし、トムはどう考えても致命傷に見えたのに最後ピンピンしてるし……。トムが語った「真相」はルビーが思い出したことではないので、やはり作り話で、トムは一時期付き合ってただけのキモストーカーなのか? 最後まで見るとどこからどこまでが真実なのか分からなくなります。前に紹介した"Little Fish"も記憶の話でしたが、映画で記憶を扱う際は上手くやらないと不確かなことが多くなりすぎて面白さを損なう気がします。どんな可能性も考えられる映画ってつまらなくないですか? ある程度の結論の匂わせはあった方が良いと思うんですが、確実なヒントがないので本作で一貫したストーリーを導き出すのは難しいですね。何より、最初から最後まで(笑)トムがイマイチ魅力的に見えないんですよねえ……。トムって名前で思い出したけど、"移動都市/モータル・エンジン"のトムも最後まで魅力的に思えなかったんだぜ!

 

原題の"Hippopotamus"は、劇中でルビーが「Hippocampus」をそう言い間違えるところから来ています。日本語でもカバと海馬で音が近いのが面白いですね。音が近いのに意味が全然違う、同じ監禁でも意図が全然違うということを示唆しているのかもしれませんが、その意図とやらが明確にならないのが釈然としません。観客の予想から外れていくストーリーですが、それが良いこととは限りませんね。

 

 

★★★★☆  4.5/10点

Rotten Tomatoes  N/A,45%

IMDb  5.1

これも今年ワースト候補かあっ!!