Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

Heiroによる、辺境の映画・音楽を紹介・レビューするブログです。(映画レビューの際はのっけからしこたまネタバレします。映画は★、音楽は☆で評価) ツイッターアカウントはこちら→https://twitter.com/chloe_heiro0226

"Fleabag フリーバッグ(Fleabag)"シーズン1 完走(感想)。

こんなん逆に好感持つわ。

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公式トレイラー(何故か日本語版がない。Amazon……)

www.youtube.com

 

フィービー・ウォーラー=ブリッジ。映画やドラマをそれなりに観ているHeiroと同じような人ならその名に聞き覚えがあるかもしれません。例えば……"ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー"でドロイドのL3-39の声をやってました(「と言われても」?)。"インディ・ジョーンズ"の新作にも出るみたいですよ。しかし女優活動より有名なのは脚本家の肩書きの方でしょう。"フリー・ガイ"のヒロイン役で日本の映画ファンにも存在が認知されたであろうジョディ・カマーがブレイクしたドラマ"Killing Eve/キリング・イヴ"や、やっと公開日が3週間後に迫った"007 ノー・タイム・トゥ・ダイ"の脚本も手掛けています。ご存じ、ブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリーが主演してた"Mr. & Mrs. スミス"のテレビドラマ版にも出るはずでしたが、そっちは降板しちゃったようです。まあそれは置いといて……彼女が製作総指揮・脚本・主演を務めたブラックコメディがこの"Fleabag フリーバッグ"なんですな。Heiroもほぼ名前しか知らなくて、彼女が脚本書いてた"キリング・イヴ"シーズン1は去年観て気に入ってたんですが、特にそれ以上の情報がなく。ここらでちょいと確認しとかなきゃいかんだろと半ば使命感に突き動かされ本作観てみましたが、なるほどこれは面白いね!

 

有名なキャストはフィービーを除けば多分"女王陛下のお気に入り"オリヴィア・コールマンだけでしょう(Heiroが知らないだけかもです)。しかも割と嫌な役で出てくれてます(笑)。本当は一番ヤバいキャラは主人公のフリーバッグ(とクレジットされているが誰にもその名(または本名)を呼ばれない)なんですが、意外にも嫌悪感を覚えませんでした。Amazonでのレビューを読むとフリーバッグのキャラが受け付けなさすぎてダメだった人もいたようです。まあ普通に考えりゃそうなんですよ。誰とでも寝てるように見えるし、オリヴィア・コールマン演じる継母の高価な持ち物を盗んで売っ払おうとするし、人には思ったこと言っちゃう失礼なヤツだから。でもねえ、演じているフィービーがチャーミングすぎるから逆に目が引きつけられます。その理由はまず、フリーバッグが第四の壁破りをすること。"デッドプール"などでお馴染みの手法ですが、もしかしたらフリーバッグはデップーよりも多く観客にコンタクトしてきます。数分に1回は必ず話しかけてくるか、そうでなくともアイコンタクトをいちいち挟みます。過剰なまでに。これにノれるかどうかでも本作への評価が分かれるでしょうね。他作品だと、普通周りで起こる出来事が小休止してる時に壁破りすることが多いと思いますが、フリーバッグは会話や行動の途中でも構わずカメラを向きます。本当にシームレス。ラブシーン中でもいつも通りにやるので実にシュール。これが単に壁破り自体が持つ面白さに寄り掛かった演出ならくどいだけで終わったでしょうが、フリーバッグは行動はサイテーでも実際は寂しい人だし、目の前の関係性に本気になれないから大事なシーンでも集中できないんだなと考えると、必然性のある演出だと思えてきます(ちなみに、ほとんどのエピソードを監督してるハリー・ブラッドビアは"エノーラ・ホームズの事件簿"でも第四の壁破りしてましたね)。

後、気持ちを正直に表情に出すフリーバッグ、もといフィービーが単純に可愛い。この人一般的にいうと美人なんですかね? 個人的にはすごく好きですが。外見からは上品で大人しそうな人に思えますが、フリーバッグはそれの真逆のキャラです。フリーバッグはどう見ても性依存症だし(自分では否定してるけどそれがまさに依存症っぽい)。Heiroは基本的に浮気・不倫ものとか奔放なキャラが主人公の作品は気持ちがあまり理解できないし嫌悪感が先に立つので好きじゃないんですが(おそらく現実だとHeiroはどっちかというと被害者になるし)、これはそうでもなかった。やっぱりフリーバッグの心情がダダ漏れだからでしょうね。1話20~30分という実にHeiroに優しい尺の中でも、数回はこっちにしかめっ面してきます。そしたらどうしても観客との親密度上がるもんね。

 

かっこ、

そういえば前にポリアモリー(各々の同意の上で、複数の相手と恋愛関係を持つこと)というものについて知ったんですよ。モノガミー(一夫一妻制)的な恋愛が普通推奨されるのは、どう考えても人間の動物としての本能を抑えるための理性的な枷だし、別にポリアモリーに理解がある人たちの中だけで実践するのは全然自由だと思ってますが、びっくりしたのは、そういう人たちでも嫉妬心を覚えることがあるらしいんですよね。嫉妬心がないからポリアモリーが成り立つんだと考えてたのに、それだとモノガミー派と変わらないじゃないか! せっかく枷から解放されたのに、恋愛相手が増えるとその分嫉妬する可能性も増すような……本末転倒じゃないのと思っちゃいますね。浮気が止められない人の中には潜在的にポリアモリー願望のある人も一定数含まれてるんだろうし、一口に浮気と言っても原因は様々あるでしょうが、モノガミー派にはその見分けがつかないからね。困ったもんだ。一応言っとくと、浮気・不倫ものでも、された方がDVやモラハラしてたり、した方が政略結婚とかで満たされないために浮気してる場合は大体嫌悪感は持ちませんよ。欲望のまんま浮気するヤツが悪ね。それでどっちも本気なんだとか言われても、ポリアモリーからしても混同されたら困る厄介な存在でしょ。交際相手に同意なくやらかしてる時点でポリアモリーの風上にも置けないし。でも実際、浮気・不倫ものがこれだけ世にあるのって、やっぱり相当多くの人がそういう願望を秘めてるからなのかなぁ。そうだとすれば、もっとポリアモリーが普及しても良いはずだけど……嫉妬心が邪魔するのだろうか。Heiroの友人で、浮気できるくらいモテたいという願望を日頃から語ってるヤツがいますが、あいつはもし彼女が浮気しても全然OKって言うんですよね。それが本当なら、大したもんだと思いますよ。器がデカくて。大抵、浮気したヤツって自分がされる側に回るとキレますもんね。まあその友人は別にモテないんで何の心配もしてないんですけど(笑)。

閑話休題、かっこ閉じ。

 

フリーバッグの場合、浮気はバレてないので彼氏とそういう修羅場はないけど、本人が色々とアブノーマルなので真面目な彼氏のハリーは苦悩させられます(笑)。脇役のキャラも立ってて、このハリーを演じるヒュー・スキナーが弱々しいエディ・レッドメインみたいな感じですごく良い。フリーバッグの父役のビル・パターソンはウド・キアみたいな顔してるし(笑)。全然怪しい人物じゃないけど。最初はどうかと思った人物にも心打たれる一面があります。自殺してしまったフリーバッグの親友ブーはあまり賢そうに見えませんが時折含蓄のある一言を発するし、にべもなく融資を断った銀行員のおじさんとはシーズン1最終話である6話で打ち解けます。6話の終盤でブーの死の真相が明かされますが、ここで初めてシリアスな展開になりますね。しかもその原因はブーの思い人にフリーバッグが分かってて手を出したため。サイテーどころじゃない最低な行為をしちゃったわけですが、ここまででフリーバッグと観客の間の関係性ができてきてるので、観客の心を離さずに展開についてこさせるようになってると思います。そして最後に銀行員との話でホロリ。やるじゃんフィービー・ウォーラー=ブリッジ!! ちょっとギクシャクしてた姉との心温まる関係修復を描きながら、そこに決定的なヒビが入って、それをシーズン2へのクリフハンガーにしてますからね。6話の密度ハンパない。

 

シーズン1観た限りだと、物語には大きなゴールはありません。クレイジーなキャラクターの日常に付き合ってるような感じです。それが苦手な人もいるかもね。女性が観ると共感できるのかできないのか気になります。少なくとも、ここまで自分に正直に生きている主人公は珍しいです。そのうちシーズン2にも手出すかと思います。

 

あ、それと、イギリスにも5秒ルール(3秒ルールと同じ)あるんですね。皆考えることは同じだな。