Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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"クワイエット・プレイス 破られた沈黙(A Quiet Place Part II)"(2020) Review!

「静かな日常」に新たな意味を与えてしまったシリーズ。
(※当たり前ですが、前作"クワイエット・プレイス"のネタバレをしています)f:id:heiro_chloe:20211204221247j:plain
公式トレイラー
夫婦で映画を作ってるのはポール・W・S・アンダーソン&ミラ・ジョヴォヴィッチ夫妻だけにあらず。前作"クワイエット・プレイス"の大ヒットで名を挙げたジョン・クラシンスキー&エミリー・ブラント夫妻がまたやってくれました。エミリーの方が超人気ですから、ジョンはこの成功で胸を撫で下ろし……たかどうかは定かではありませんが、良かったね! ちなみにエミリーは今年の初夢ならぬ2回目くらいの夢に出てきてくれて、英語でお喋りできました。Heiroは英語話せないはずなんですけどね。超過密スケジュールをおして来てくれるなんて、さすが大スターは器が違うわと感激しましたよ。何故か先生として出てきましたけど。あ、メリー・ポピンズだからか! まあメリーは先生というかナニーですけど。
 
 
あらすじ
前作にて大黒柱のリーを失ったアボット家。音を感知して襲い来るエイリアンが蔓延る世界で、母親のエヴリンは長女で聾のリーガン、長男のマーカス、そして生まれたばかりの三男(次男のボーは前作で死亡)を連れ、必死に生き延びていた。エヴリンはある日、同じく生き延びていたかつての友人エメットと再会し、エイリアン以外の脅威が存在していることを知る……。
 
スタッフ・キャスト
監督は前作に引き続き、"最高の家族の見つけかた"のジョン・クラシンスキー。
前作に引き続き、エヴリン役は"ジャングル・クルーズ"エミリー・ブラント、リーガン役は"ワンダーストラック"のミリセント・シモンズ、マーカス役は"ハニーボーイ"のノア・ジュープが演じた。エメット役で"インセプション"キリアン・マーフィが出演している。他。
 
 
エミリー・ブラント、今年本作と"ジャングル・クルーズ"があって絶好調ですね(本当は日本公開未定の"Wild Mountain Thyme"というロマコメがあるのだが、すこぶる評判が悪いらしい(笑))。ま、本来本作は去年の5月には公開されるはずだったんですけどね。もう1年も経ってたんだなあ。邦題もほぼ原題まんまの"クワイエット・プレイス PART II"から"クワイエット・プレイス 破られた沈黙"に変わりました。「ついに(沈黙を破る)」感を出したかったんでしょうね。サブタイトル付けるのは別に構わないんですが、「PART II」表記は残しても良かった気はします。本シリーズはまだ続く感じがありますし、後々どの作品が何番目か分かりにくくなりそう。3作目としての続編ではないようですが、ジェフ・ニコルズ監督でスピンオフ的な作品が作られ始めていますね(IMDbでは"A Quiet Place Part III"と表記されてますが……)。"ジョン・ウィック"シリーズは2作目が原題まんまの"ジョン・ウィック: チャプター2"なのに、3作目は"ジョン・ウィック: パラベラム"です。原題は"John Wick: Chapter 3 - Parabellum"なのに。確かにちょっと長くはなりますけど、「ジョン・ウィック: チャプター3 パラベラム」の方が表記が一貫してて良いと思うけどなー。
そう言えば、ポール・W・S・アンダーソン&ミラ・ジョヴォヴィッチ"バイオハザード"シリーズって、メインタイトルが原題だと"Resident Evil"であるという違いこそあれど、2作目が"バイオハザードII アポカリプス"(原題とサブタイトル同じ)なのに、3作目がただの"バイオハザードIII"なんですよね。原題のタイトルは"Resident Evil: Extinction"(絶滅)なんで、そのまま「エクスティンクション」か、もしくはそれっぽい単語を付ければ良かったのに。だって、4作目以降の邦題ではサブタイトルが復活してるんですよ。5作目の"バイオハザードV リトリビューション"だって、日本人にはあまり馴染みがない「retribution(報い)」という単語をそのまま原題から引っ張ってきてますからね。「『エクスティンクション』って付けても意味が伝わらないでしょ」って主張は説得力ないですよ。それなら別のサブタイトルにすれば良いだけ。3作目だけサブタイトルがないのって気持ち悪いでしょ、一貫性がなくて。とか何とか文句を垂れつつも、Heiroは"バイオハザード"シリーズに特に思い入れないし、"バイオハザードIII"までしか観てないし、もっと言えばそもそも原題にはナンバリング入ってないんですよね(笑)。今の邦題で十分どれが何作目か分かりやすくなってるのよね。
邦題といえば、"クワイエット・プレイス"公開後、そのパクリとしか思えない邦題が増えましたね。この話題は今後「邦題ラボ」コーナーの方で使えそうなので温存しときますが、このブログで酷評(笑)した"クワイエット・フレンド 見えない、ともだち"もパクリ邦題の1つでしたね。内容的には何の関係もなかったですので、パクリ問題は置いといても、邦題付けた人に何でそのタイトルにしたのか夜通し問い詰めたい気持ちになりました。「見えない、ともだち」って真ん中に読点が入ってるのもよく分かんないし。そういえばルーマニア映画"私の、息子"ってのもありましたが、何であれも読点入ってるのか分からなかったや。
さて本題。本作は続編だけに、前作の直後から始まります。当たり前だけど、前作観てから本作観てね。前作はすでに世界が変わり果てた状態からのスタートでした。語られなかった「1日目」は本作でやっとお目にかかれましたが、このシークエンスから早速心を持ってかれます。子どもの野球の試合中に隕石が降ってきて、しばらくするとエイリアンが町中をパニックに陥れます。ここで一旦エヴリン&マーカス&ボーのチームと、リー&リーガンのチームに分かれます。去年の時点で公開されていたトレイラーで観れた場面ではありますが、エヴリンの運転する車の中から撮った映像で、人々のパニックを映しながら他の車と事故りかけたり、すでにエイリアンの襲撃を受けたバスが正面から突っ込んでくるのでバックに切り替えてどうにか難を逃れる……という流れを長回しで見せてくれます。後から思いましたが、確かめてみてやはり。ジョン・クラシンスキーはアルフォンソ・キュアロン"トゥモロー・ワールド"長回しシーンに影響を受けてるそうです。どっちも赤ちゃんを守り抜く話ですしね。
 
前作でエイリアンの倒し方が判明したので、続編ではどうやって恐怖を持続させるのかなーと危惧してましたが、ヤツらはいきなり音を聞きつけて飛んでくるので、単純に不意を突かれますね。特に今回はエヴリンたちがどうしても音を立てやすい設定になってます。まず赤ちゃんね。どうしても泣きますから。前作の時点で、「何で音立てたら死ぬ世界で赤ちゃん産んでんの?」みたいなコメントしてる観客が割といた気がしますが、いや、じゃないと人類終わるから! 何も特別な理由なく困難な中で赤ちゃんを産むという話になってる所に、ジョン・クラシンスキーの失われない楽観性みたいなものを感じて良かったんですが。皆は違うのかな? また、マーカスはエヴリン夫婦の旧友エメットが仕掛けたトラバサミに引っかかり、足がエラいことに。まあ前作でいう所の、エヴリンが踏んだ釘的なポジションですね。釘よりもゴア度は増してますが。こんなエグめな描写入れてくるあたり、ジョン・クラシンスキーも中々性格悪いですな(笑)。そして、リーガンの単独行動パートもあります。リーガンは耳が聞こえないので、そのシーンは無音になったりします。どこで自分が音立ててるか分からないんですよね。いやー怖い。
 
今回はこんな世界に長くいすぎておかしくなった人間たちも登場します。"新感染半島 ファイナル・ステージ"とかほど派手にイッちゃってるわけじゃないですけど。そこでエメットとリーガンの絆が深まります。やっぱねぇ、キリアン・マーフィはカッコ良いですよ。"ダンケルク"では本当に良いとこなかったですけどね(笑)。
何故かラジオからボビー・ダーリンの"Beyond the Sea"が流れてきて、マーカスがその曲名から、海を渡った先の安全地帯からのメッセージだと気づきます。今回マーカスは"ダンケルク"キリアン・マーフィほどではないとはいえ大体痛がってるだけなので、これは数少ないファインプレー。ボビー・ダーリンといえば、過去に少年への性的暴行を行おうとしたことが発覚して干されているケヴィン・スペイシーが監督・脚本・主演で伝記映画作ったんですよね。"ビヨンド the シー 夢見るように歌えば"っていう(この邦題の「the」だけが英語なのホント意味不明)。結構その映画は好きでした。ケヴィン・スペイシーが見事に歌って踊れることを証明した作品でもあり。終盤の"As Long As I'm Singing"のシーンなんかも感動的でね。本当に才能あるんだからそんなことさえやらかさなければね……。このタイミングで久しぶりに彼について検索してみると、何とフランコ・ネロが監督するイタリア映画に俳優として出るらしいですよ。しかも大女優フェイ・ダナウェイと共演。フェイ・ダナウェイってまだ活動してたんだね。世間はこの件に関してどう反応するんだろうか。
 
本作ではミリセント・シモンズ演じるリーガンが結構フィーチャーされてます。ミリセント(Millicent)。milli(ミリ)なんだかcent(i)(センチ)なんだか分からないですが、中世あたりから使われ始めた人名だそうです。良い名前ですね。多分女優では彼女以外にほとんどいない名前だし、佇まいも独特だし、実際に聾ということは他の女優と違う面での演技ができるわけで、もっと色んな映画に出てほしいんですが、今のとこ"ワンダーストラック"とこのシリーズだけみたいですね。"RUN/ラン"のキーラ・アレンもそうですが、こういう所に新時代の逸材がいる気がするんですけどねえ。本作で初めてリーガンが少し喋るんですが(前作でも喋ってたっけ? 忘れた)、そういう驚きもあって良かったです。
SNSとかで発されたコメントが大炎上してたりすると、Heiroはこのシリーズを思い出します。「声を出したら超即死」ですよ。もちろんそのコメントが社会的・倫理的に許されないものであれば批判されるのは当然なんですが、1人1発その人にビンタするとしてヘタすりゃ何千発、何万発になるじゃないですか。ほっぺ腫れるだけじゃすまないですよ。ジョン・クラシンスキーも世界の有名人ですから、そういうとこから発想したのかなと勝手に思っています。本作はコロナ禍の世の中とダブるとこもあり。「静かな日常」と「穏やかな日常」は必ずしもイコールじゃないんだなと。静けさって恐ろしいものでもあったんですね。でも、ゴアありのジャンル映画であるにもかかわらず、静けさを大切にしたこの映画には気品すら感じます。
 
しっかし、どのシーンでも常にエミリーは女神のように美しくてうっとりしました。さすが夫が撮ってるだけある! ジョンは逆玉の輿であることを自覚しているようで、トーク番組でイギリスの税関の人にヒドい対応を受けたことを度々ネタにしています。「役者です」と言っても反応は冷たく、代表作が(アメリカでのリメイク版)"ジ・オフィス"だと答えると、イギリス版がオリジナルなので良い顔はされず。「妻も女優です」と話したら名前を聞かれたのでエミリー・ブラントだと答えたら「YOU??(お前が??)」とキレられたという自虐エピソードです。テッパンですね(笑)。でもそんなジョンを見るエミリーの表情にすごく愛を感じます。いやー幸せ者ですねジョン。でも実際監督としての才能あるし、周りの目も変わっていくと良いねえ。
 
 
★★★★★★★☆  7.5/10
Rotten Tomatoes  91%,92%
IMDb  7.4
本作でエイリアンは泳げないことが判明しました。段々敵が弱体化されてますが、続編はどうなる?