ワクチンはウィルスから作られる。
公式トレイラー
そんなに期待しないで見ましたけど、割と面白かったです。こんなゆるい映画でも韓国映画はさすがのクオリティを保ってますね。
あらすじ
田舎町に青年のゾンビが現れた。パク一家の父親マンドクがゾンビに襲われるも、何故かゾンビ化せず謎の若返り現象が起きる。常に金欠の一家は、ゾンビを飼って老人たちを若返らせるビジネスに手を出すが……。
スタッフ・キャスト
監督はこれがデビュー作となるイ・ミンジェ。
一家の長男ジュンゴル役を"殺人の告白"のチョン・ジェヨン、次男ミンゴル役を"殺人者の記憶法"のキム・ナムギルが演じた。他。
まず思ったのは、コメディ演出のあまりの過剰さ……というか古さ? 日本でも昔観たような……と思ってましたが、たまたま今やってるドラマ観ると同じような演出やってましたわ。アジア的なものなのかなぁ。ここ笑い所ですよ〜って感じに「ポヨヨーン」みたいな音が鳴ったりするんですよね。トラックでゾンビ轢いた時も謎の効果音が流れた時は眩暈がしましたよ。絶対逆効果だって……。大声出してる時にスローモーションになって文字が口から出てくるシーンまでありましたね。ジャイアンが歌ってる時の「ボエ~」みたいな感じの。でも、チョンビと名付けられ一家に飼われるゾンビが歯を抜かれて、それでも好物のキャベツを齧ろうと頑張ってる時にギュムギュム言わせながらハムハムしてるシーンは笑いました。そこは特に変な音足されてなかったのよね。そのくらいのバランスで良いと思うけどなぁ。韓国で大ヒットしたらしい"エクストリーム・ジョブ"にも、同じような特徴ありましたねそう言えば。面白かったけどね。
本作は色んなゾンビ映画へのオマージュが見られます。あんまりゾンビ映画詳しくないですけど、ゾンビを働かせてるって所は"ゾンビーノ"(未見)や"ショーン・オブ・ザ・デッド"(最後だけだけど)、あんまり深掘りされないけどミンゴルがゾンビについての研究ノートを作ってる所は"ゾンビランド"、イケメンゾンビと末っ子ヘゴルの恋は"ウォーム・ボディーズ"、ゾンビがレイヴしてるようなシーンは"バタリアン2"……というかその元ネタであろうマイケル・ジャクソンの"Thriller"かな? 劇中では、ゾンビの生態を学ぶための動画として同じ韓国ゾンビ映画の"新感染 ファイナル・エクスプレス"が流れます。まあ、本作のゾンビはあんな感じじゃなくあんまりスピーディーじゃないんですけどね。終盤、ハワイに旅行に行ったマンドクが帰ってくる時、トンネルの向こうからアロハシャツで歩いてきますね。"新感染"のラストでは、生き残った主人公の娘がトンネルの中を"アロハ・オエ"を歌いながら歩きます。絶対意識してるよね(笑)!? 色んなゾンビ映画を観てるとより楽しめると思いますが、このギャグは"新感染"を観てないと十分には笑えません。マンドクもついにゾンビ化したかと思わせてピンピンしてるというギャグなので、必ずしも観てなくても大丈夫ですけどね。でも観てね。
ただの過去のゾンビ映画のパッチワークに終始しているわけではなく、新鮮な部分もちゃんとあります。チョンビはダメゾンビで、そこらへんを歩いてるただのおばちゃんすら襲えません。ゾンビ界にも落ちこぼれがいるんですねぇ。人の肉よりキャベツが好きな草食系だし。極め付けはオチで、ゾンビウィルスへの耐性を持っていたマンドクが人間ワクチンとなり、ゾンビたちに噛み付いて治していくのです。こんなオチ見たことねぇ! しかも爽快で笑える!! ゾンビ映画でこういうのありましたっけ? 結構すごい発想じゃない? まあ、これまでに一家が殺しちゃったゾンビもいるし、草刈り機みたいなやつをブン回して戦ってましたから、手とか失ってる個体もいるでしょうけど……(笑)。そのあたりは考え出すとブラックですね。本作は、中盤まで全くゾンビパニックが起こらない中々挑戦的な作りで、全くグロくない(一体だけ露骨に腕がもげるゾンビがいる。しかも唐突にモザイクが入る(笑))ので、例えばハラワタもしゃもしゃやられる人間とかはいません(多分)。そういう意味では、大抵のゾンビたちは結果的にはほぼ無傷で人間に戻るのかな? 戻っても"CURED キュアード"みたいに、誰かを殺した罪悪感に苛まれないですむかもね。めでたしめでたし。
ゾンビは衛生的には最悪の存在だし、どの作品でも厄介者として描かれますが、イケメンのチョンビは一家の末娘ヘゴルに惚れられます。外見至上主義の極北のような気もしますが、それで(まあ……結果的には)救われるゾンビもいると考えると、物事はそう単純じゃないんだなぁとしみじみ(笑)。
★★★★★★★ 7/10点
Rotten Tomatoes 89%,73%
IMDb 6.5
ところでチョンビの本名出てきてないけど、その名前のまま生きてくの?