Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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"クルエラ(Cruella)"(2021) Review!

ディズニー版"ジョーカー"というよりも"ヴェノム"……って一応あれもディズニーか?

(※"ジョーカー""女王陛下のお気に入り"のネタバレをしています)

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公式特報


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公式トレイラー


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遅ればせながら観てきましたよ。まず、"101匹わんちゃん"は幼少期に観たっきりであることを断っておきます。実写版の"101"の方は観てるかどうかも定かでないです(笑)。なので、「本来クルエラというキャラはうんぬんかんぬん」と詳しく話すことはできません。ほぼ真っ白の状態で、本作単品での感想です。同じクレイグ・ギレスピー作品なら前作の"アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル"の方が好きでしたが、こっちも結構楽しめました。エマ・ストーンほんと好き。

 

 

あらすじ

幼少期からファッションに興味があり、白黒の髪と反抗的な性格のために、母親のキャサリン以外に居場所を見出せなかったエステラ。学校にもいられなくなり、母娘2人でロンドンに移住しようとした矢先、ヘルマン男爵夫人(バロネス)のパーティで起こった不慮の事故によりキャサリンが死んでしまう。どうにかロンドンに辿り着いたエステラは浮浪児のジャスパー、ホーレスと仲良くなる。10年後、泥棒として生計を立てていたエステラは憧れのファッションデザイナーを目指し奮闘、業界トップデザイナーのバロネスに才能を見出されるが……。

 

スタッフ・キャスト

監督は前述のように、クレイグ・ギレスピーエステラ/クルエラ役には"ラ・ラ・ランド"エマ・ストーン、バロネス役には"ラスト・クリスマス"エマ・トンプソンが配されている。他。

 

 

エマ・ストーンって、もちろんセレブだけど、すごく庶民感ある人ですよね。気さくで。ちょっとスレてて、でも基本良い人みたいな。絶対一人称「あたい」ですよ(笑)。そんなエマ・ストーンだから、プリンセスやっても、イギリス英語喋っても、あんま偉そうにならないんですよね。いや、態度は十分偉そうだけど、同時にちゃんと心細いのに頑張ってる感もあってね。え、クルエラはプリンセスじゃなくてヴィランだって? これが割とプリンセスみたいなものだったんですって。

まず「クルエラ(Cruella)」ってネーミング。本名はエステラ(Estella)でしょ。両方、最後にエラ(Ella)が付いてますが、エラとはシンデレラの本名です。少なくともリリー・ジェームズがやってた"シンデレラ"の方ではね。フランスではシンデレラはサンドリヨンと呼ばれるので、童話が英語に翻訳された時にエラという名前にされたのかもしれませんね。エラが灰(cinder)を被ってるので、シンダー・エラ(cinder-Ella)、シンデレラ(Cinderella)というわけ。エステラとかイザベラ(Isabella)とかガブリエラ(Gabriella)などの名前は、エラという愛称で呼ばれることがあります。母親のキャサリンは、「残酷な」という意味のクルーエル(cruel)の後ろにエラを付け、クルーエル・エラ(cruel-Ella)でクルエラ(Cruella)と呼んでいたと。エステラの語源はラテン語のステラ(Stella)、つまりスター、星です。本当は星子(せいこ、ほしこ)ちゃんって名前なのに、酷子(ひでこ)って呼ばれてる、みたいなことですよ。ひでぇ(笑)。とりあえず、このシンデレラとの符号がプリンセスたる所以の1つ目。

2つ目は、クルエラが実はバロネスの娘だったという事実。これは結構観ててビックリしました。男爵の娘だったんですねえ。もちろん字義的な意味ではプリンセスじゃないですが、そこはホラ、ムーランとかもいるから……。ちゃんとヘルマン・ホールを相続しますし。後述しますが、このストーリーの捻りのために"ジョーカー"との共通点が1つ生まれています。

 

そもそも、今回のクルエラはヴィランとしては弱い所があるんですよね。「悪」と言っても、読み方は「あく」じゃくて「ワル」という感じです。結局ダルメシアンを殺して毛皮にしたりしてないしね。それをやっちゃうと観客が彼女を応援できなくなると判断されたんでしょうけど。なので、"ジョーカー"と比べるとかなり倫理的です。人も殺さないしね(社会的には殺すけど)。だってねえ、どう考えても本作のヴィランはバロネスでしょ。クルエラの育ての母のキャサリンを殺してるんだから。クルエラも焼き殺そうとしたしね。それなのにちょっと罠にかけて逮捕させるだけってのはねえ……もう聖人クラスよ。アーカムアサイラムに入れられるのはバロネスの方なのよ! そういう意味で、まあ"ヴェノム"とかデヴィッド・エアーの方の"スーサイド・スクワッド"くらいのソフトさかなと。"ヴェノム"はあれだけ「凶悪」とか「最悪」とか謳ってましたから、PG12と聞いた時は拍子抜けしましたね。"クルエラ"は別にそこまでエグい描写入れる必要もないですが、エマ・ストーン版クルエラの延長線上に"101"グレン・クローズ版クルエラはいないだろうなと。これまでのクルエラが好きな人は別物として楽しまないといかんでしょうね。また、ジョーカーは血の繋がりのない家族によりメンタルに止めを刺されますが、クルエラは血の繋がりのない家族に助けられます。真逆。ここも結構ソフトな部分ね。

とは言え、"ジョーカー"っぽい所はそこかしこにあります。両方、自らの特徴を揶揄され、社会から除け者にされます。この点では"ジョーカー"より先に"オズの魔法使"の前日譚ミュージカル"ウィキッド"を思い出しましたが。次の点、親がサイコ。ジョーカーことアーサー・フレックの母親をサイコと呼ぶのはちょっと憚られますが、バロネスはれっきとしたサイコです。そして一番「これは!」と思ったのは、両方チャップリンが作曲した"Smile"が使われていること。これは意図的にやってるんでしょうかね。あまりにも共通点が多いので、オマージュしてるのは確かなのかなと。クルエラがバロネスの黄金のドレスに仕掛けた蛾の蛹が一斉に羽化する所はコウモリの大群にも見えて、「おっ、バットマン意識してんのか?」みたいなね(笑)。そんなこと思ってませんよ。ええ全然。今時はコウモリというとバットマンじゃなくて"モービウス"の方なんですかね? っておい! クレイグ・ギレスピーよ、マーベルファンなのかDCファンなのかハッキリせい! とかそんなこと思ってませんよ。全然ね。

 

さて、エマ・ストーンVSエマ・トンプソンというエマエマ対決となった本作。ヴィジュアル面がかなりインパクトあって良かったですね! 白黒ヘアーは普通にカッコ良いし、クルエラ可愛すぎます。これ観てクルエラヘアーに挑戦する人も出てくるんじゃないですかね。それくらいハマってました。Heiroはファッションには全くと言っていいほど興味がないんですが、クルエラがバロネスに対して行うゲリラ的なショーは素直に楽しめました。フラッシュペーパーでできてるような白装束を燃やして、下から真っ赤なドレスのクルエラが出てくるシーン最高でしょ!! ゴミ収集車から大量のゴミが出てきたと思ったら超巨大ドレスだったりね。ある分野に興味を持たない人を楽しませられるのは、すごいことですよ。ケイパーもの的な部分はそんなに真面目にやってなかったので、むしろゲリラショーの方に振り切ってくれても良かったな。エマ・トンプソンも女王様っぷりがハマってました。やっぱりイギリス英語好きですね。何であんなに偉そうに聞こえるんだろう(笑)。本作のオチは、前にエマ・ストーンが出ていた"女王陛下のお気に入り"へのリベンジにもなってますね。同作のアビゲイルは、権力を奪おうとあれだけ頑張ったのに空しい結果に終わりましたから。

 

事前にキャストの予習をしなかったので、色々知ってる俳優が出てて嬉しいサプライズでした。ホーレス役の真ん丸ちゃんはポール・ウォルター・ハウザー。"アイ, トーニャ"にも出てましたね。"ブラック・クランズマン"にも。今回含めどれもほぼ同じキャラクターですが(笑)。クルエラに片想いしてるっぽいジャスパー役はジョエル・フライ。この人はこの前紹介した"In the Earth"の主演してますね。地味だけどお人好しって感じの人で良かったです。あれだけ自分勝手に振る舞ってたクルエラを許してくれましたしね。欲を言えば、もっと許される理由に説得力を持たせて欲しかったけどね。「ムカついたけど、家族だからしょうがない、許す!」みたいな展開で、ちょいご都合主義でしたね。その前にクルエラが2人のために何かやってくれてればねぇ……、あ、刑務所からは出してくれたけどさ(笑)。でもその後すぐには許さなかったから、やっぱりジャスパーにとってはまだ謝罪が足りなかったはずなんですよ。これも惚れた弱みかね。

バロネスの側近でクルエラの命の恩人、ジョン役はマーク・ストロング。ご存じ"キングスマン"のマーリンですが、この人ホント良いです。何か可愛いんですよね。おじさんだけど。スタンリー・トゥッチに似すぎだよね。で、キャサリン役のエミリー・ビーチャム。この人の作品観たことないけど見覚えあんなと思ったら、"リトル・ジョー"の予告で見たんだな。早くあれも観ないとな。って、"ヘイル・シーザー"に出てたんか……観たな……。

 

そういや、劇中に「schedule」って単語が出てきたけど、「スケジュール」じゃなくて「シェジュール」って発音されてたの聞いた時に「あ~イギリス英語だな~」って思った。発音が違うって話聞いたことあったので。良き。

 

 

★★★★★★★  7/10点

Rotten Tomatoes  74%,97%

IMDb  7.4

全く意識してなかったけど、これこのブログ101番目の記事だよ!!