Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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邦題タイプA(原題そのままカタカナ化)

邦題ラボ、第1のテーマ。

 

よし。ちゃんと更新したぞ。

手始めに、最も簡単な邦題のタイプを取り上げましょう。それは原題の音をそのままカタカナに直したパターン。過去から現在まで死ぬほど多く存在するし、これからもそうでしょう。ただし、そのほとんどは原題が英語の作品。外来語がたくさん浸透している日本語でも、さすがに英語とその他の言語を同程度に取り入れてるわけじゃないですからね。英語以外の言語は英語化されて邦題になったりします(アメリカ版タイトルを引き継いだり)。カタカナのみの表記になる場合と、英語とカタカナを併せて表記する場合があります。外国語の発音を正確にカタカナ化するのは不可能なため、転写の際に表記揺れが発生します。Aタイプの亜種として、原題にはある不定冠詞(a, an)、定冠詞(the)が消されたり、原題では複数形なのに邦題では単数形になるパターンがあります。

 

長所は、やはりまずどの映画か判別しやすい点。後、原題のイメージを可能な限り損なわない点。あまりにかけ離れた邦題になると、原題を知る人が拒否反応を示す場合がありますからね。原題を知る人ってのがどのくらいの割合でいるのか分かりませんけど。原題知らんがな勢にどれくらいアピールできるかは、その原題がどれだけ分かりやすい言葉かによるでしょう。絶妙に聴き馴染みのない言葉の場合、その特異な雰囲気も引き継げる可能性もあります。個人的には、タイプAで一番の当たりがこのパターンかな。原題まんまがベストと判断できる場合ってことね。ベターでなく。

短所は、味気ないと言えば味気ないこと。まあ、その意味が日本人に伝わるか以外何も考えなくても付けられますからね。どうしてもクリエイティヴとは言い難いね。だから悪い、とは言ってませんよ。何でもかんでも日本語に直す必要はありません。元々日本のものじゃないんだから。異物を異物として受け入れることも時には必要。しかし、複数形から単数形に変えられたり冠詞を省略されると、どちらが正しい邦題だったか思い出せない事態が起こり得ます。それだけで検索できなくなったりはしないし、日本語にはない要素なので仕方ないけど、割と面倒。

 

例.

"アイム・ノット・シリアルキラー(I Am Not a Serial Killer)"

英語の原題→カタカナ。不定冠詞が省かれている。そうだとしても「アイ・アム・ノット・シリアルキラー」になるはずだが、字面を少しでもシンプルに見せるためだろう、「アイ・アム」が省略形の「アイム」になっている。

 

"A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー(A Ghost Story)"

英語の原題→英語+カタカナ。邦題で、「the」はまだしも「a」が残されることは珍しい。「ゴースト・ストーリー」にすると他の幽霊ものと区別できないと判断されたのかも。

 

"アサシン クリード(Assassin's Creed)"

英語の原題→カタカナ。本来は「アサシンズ・クリード(暗殺者の信条)」となるべきだが、語感の良さを優先したのか、所有格の「's」が省かれている(原作のゲームの時点で)。

 

"アップグレード(Upgrade)"

英語の原題→カタカナ。意味も超分かる。

 

"アサシネーション・ネーション(Assassination Nation)"

英語の原題→カタカナ。意味もある程度伝わるだろうし、韻を踏んでるからそのまま使う方がベター。

 

"エクス・マキナ(Ex Machina)"

ラテン語の原題→カタカナ。デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)という言葉を知っていれば意味は分かるし、独特な響きでもある。

 

"ガール・オン・ザ・トレイン(The Girl on the Train)"

英語の原題→カタカナ。最初の「the」のみが省略されている。2回も「ザ」が出てくることを嫌ってこの形にしたのだろうが、それは正解と言えるだろう。

 

"カレ・ブラン(Carré blanc)"

フランス語の原題→カタカナ。まず意味は分からない(多分字幕でも説明されてない)が、何か良いじゃん。ちなみに「白い四角形」の意味で、それ自体は劇中に登場する。

 

"THE GUILTY/ギルティ(The Guilty)"(ハリウッドリメイク版ね)

英語の原題→英語+カタカナ。英語部分は明らかに「ザ・ギルティ」になっているのに、読み方を補助する後半のカタカナに「ザ」が入っていない。この不一致がちょっと気持ち悪い。ちなみにオリジナルのデンマーク版の原題は"Den skyldige"だが、意味はやはり「the guilty」(多分)である。

 

"クラウド アトラス(Cloud Atlas)"

英語の原題→カタカナ。日本人にはまずピンとこないが、多分アメリカ人でもそんなにピンと来ない。でもその曖昧さが作品のテーマにも通じていて、響きも独特で味わいがある。個人的には狂おしいほど好き。ひとつだけ不満を言えば、語間にスペースを入れられるのが面倒なので「クラウド・アトラス」表記にしてほしかった。

 

"サイド・エフェクト(Side Effects)"

英語の原題→カタカナ。複数形が単数形に。

 

"ザ・ショック(Schock)"

ドイツ語(かな? イタリア映画なんだけど)の原題→カタカナ。原題には定冠詞がないが邦題には付けられている。他に「ショック」というタイトルの映画はない(おそらくあったとしてもかなりマイナー)ので、差別化のためではなく、語感をより良くするためか、印象を強めるためかと思われる。「ザ」が省かれるのではなく足されるというのは珍しい。

 

"20センチュリー・ウーマン(20th Century Wowen)"

英語の原題→カタカナ。序数を示す「th」が省略されている。加えて、「women」が単数形「woman」になっている。

 

"トレジャーハンター・クミコ(Kumiko, the Treasure Hunter)"

英語の原題→カタカナ。意味は同じだが、語順が日本語的になっている。

 

"ハウス・ジャック・ビルト(The House That Jack Built)"

英語の原題→カタカナ。「the」と「that」を省略するという力業。

 

"ファニーゲーム U.S.A.(Funny Games U.S.)"

英語の原題→カタカナ+英語。複数形が単数形に、そして「U.S.」が日本人に伝わりやすいよう「U.S.A.」に変えている。

 

"フォードvsフェラーリ(Ford v Ferrari)"

英語の原題→カタカナ+英語。訴訟で使われる「〇〇対××」の「対」を意味する「v」を、日本人に伝わりやすいよう「vs」に変えている。

 

"マッドボンバー(The Mad Bomber)"

英語の原題→カタカナ。よく考えると「bomber」の発音は「ボマー」だが、ボンバーマンとか、間違った発音の方もかなり浸透しているなと再認識させられる。邦題としては「マッドボマー」より語感が好きなので、問題はないが。

 

"ユージュアル・サスペクツ(The Usual Suspects)"

英語の原題→カタカナ。複数形はそのまま残っているが、「the」は省略

 

"レクイエム・フォー・ドリーム(Requiem for a Dream)"

英語の原題→カタカナ。「a」が省略されている。

 

悪例.

"ゴッド and モンスター(Gods and Monsters)"

英語の原題→カタカナ+英語。複数形が単数形になっている。それは別に良いのだが、何故か「and」だけが英語表記になっている。Heiroはこういうよく分からない表記がすごく嫌い。

 

"シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(Captain America: Civil War)"

英語の原題→カタカナ。ただし、何故か順序が逆になっている。シリーズの前作は"キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー""キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー"だったので、「キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー」にすべきだった。

 

"ジュリエッタ(Julieta)"

スペイン語の原題→(なぜか英語読みの)カタカナ。スペイン語風に読めばフリエタになるし、カタカナで十分表現可能だし人名なんだからそのまま読めば良い。字幕の観点から言わせてもらっても、6文字のジュリエッタより2文字削減できるんだから、その分を他の情報に割けたはず。

 

"ホワット・ライズ・ビニース(What Lies Beneath)"

英語の原題→カタカナ。ピンとこない。

 

"リバー・ランズ・スルー・イット(A River Runs Through It)"

英語の原題→カタカナ。これはあまりにもやっつけ邦題すぎる。ピンとこないし頭にも入ってこないが、日本人向けにか不定冠詞が省略されている。意図がちぐはぐで強い違和感を覚える。

 

特殊な例.

"魔の巣 Manos(Manos: The Hands of Fate)"

厳密にはタイプAではないが、面白くて珍しい例なので。「manos」とはスペイン語で「手(複数形)」の意味らしい。音は変えずに当て字をしたパターン。

 

 

さあ、こんな感じで次回も頑張ろう。