Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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"アリス・スウィート・アリス(Communion)"(1976)

「赤い影」ならぬ、「黄色い影」

 

公式トレイラー

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たまには古い映画もね。アマプラで観れるようになってたので、4年ぶりに観直しました。やっぱ気味悪い映画! 主役でもないし開始早々退場してしまうのに、当時12歳の美少女だったブルック・シールズが出演していたためにそのことばかりが宣伝されてますが、タイトルにもあるアリスを演じたポーラ・E・シェパードにこそ注目するべき作品です。

 

 

あらすじ

12歳のアリスには9歳の妹カレンがいたが、親含め誰もが天使のようなカレンばかりを可愛がっていた。アリスはカレンを妬んでいたが、聖体拝領(communion)の日、カレンが何者かに絞殺され、遺体も焼かれる事件が起こる。それを皮切りに、アリスの周りの人間が次々に殺されていく。犯人は、不気味なお面を被り、黄色いレインコートを着た人物。アリスは精神的に問題があるとされ、お面もレインコートも所持していたため、犯行を疑われるが……。

 

スタッフ・キャスト

監督は"秘宮のタニア"のアルフレッド・ソウル。

アリス役は出演作が本作と"リキッド・スカイ"のみのポーラ・E・シェパード、カレン役は"プリティ・ベビー"ブルック・シールズが務めた。他。

 

 

ポーラ・E・シェパードは12歳のアリスを演じていますが、実際は19歳だったそうです。なんと! アリスは親からの注目を浴びたいという子どもらしい欲求も持ちつつ、小悪魔的でませてるし、嫌いな人間には容赦ない一面があります。本当に12歳の子役が演じていたらここまで味わい深い役にはなってなかったかも。観客もアリスを犯人と疑いながらストーリーを追うことになりますが、常に寂しそうな顔をしているので、つい同情してしまうんですね。アリスも普通にあどけなくて可愛らしい外見なのに、不運なことに妹がブルック・シールズだったので皆から強く当たられています。アリス自身も大人に口答えするし、カレンに意地悪したりするので、周りはカレンの肩を持つんですね。切ない。

 

アリスの両親は離婚し、アリスは母親のキャサリンと同居していますが、カレンが死んだために父親のドミニクが一時的に戻ってきます。その中でキャサリンとまた良い感じになりかけたりして(ドミニクは再婚してるけど)。この辺り、先日レビューした"冷たい嘘"に似てますね~。主人公に感情移入できるかどうかについては雲泥の差ですが!

 

娘と犯人の姿が同じ印象的な色をしてて、娘を失った両親の話というと、やはりニコラス・ローグ監督の"赤い影"を思い出します。実際、アルフレッド・ソウルは同作を参考にしてるそうです。こっちはスラッシャーで、あっちはジャーロ(と言っていいのかな? 一応舞台がイタリア、ヴェニスだし、イタリアも製作国だし……)。本作は「黄色い影」という邦題になっていたとしてもおかしくないぐらい。まあ、ジャーロ(giallo)とはイタリア語で「黄色」の意味らしいですから、ある意味本作の方がジャーロと呼ばれるに相応しいんですけどね。"赤い影"ではドナルド・サザーランドが父親役でしたが、どちらの作品でも父親は殺されます。真犯人が実は老婆なのも"赤い影"と同じ。犯人のトレドーニ夫人って、役名からしてイタリア系っぽくない(本当にイタリアの苗字かは知らない)? 演じているミルドレッド・クリントンはブルックリン出身のアメリカ人らしいけど。そういえば、ブルックリンってイタリア系が多いんでしたっけ。本作は色んなところでイタリアに繋がってきますね。リブート版の"IT/イット"で、主人公ビルを苦しめる死んだ弟ジョージーも、黄色いレインコートが印象的でした。本作へのオマージュだったりするんか? ジャーロにはセクシャルなシーンがあるものですが、本作に直接的な描写はありません。しかし、どことなくエロティックです。聖体拝領の時、皆が神父に対して聖餅を迎え入れようと口を開けてるとことかね。その姿が何に似てるとは言いませんけど。キリスト教徒が怒りそうな映画。

 

劇中ものすごい顔で絶叫しまくるアニーおばさんを演じたジェーン・ロウリー。彼女は、同じドナルド・サザーランド作品でも"赤い影"じゃなく"SF/ボディ・スナッチャー"に出てたヴェロニカ・カートライトを思い出させますね。"エイリアン"でも顔を歪めて叫んでましたが。

 

スラッシャーには不気味なマスクが付き物ですが、アリスや犯人が被っている仮面はガチでキモいですね。劇中でヒッチコック"サイコ"のポスターが出てきますが、本作では同作の有名なシャワーシーンを思わせるような、包丁で人を襲うシーンが拝めます。音楽もそんな感じだし。突然ショックシーンが来るので結構ビックリします。サクッと人体に突き刺さる包丁のシャープな切れ味にもビックリ。でも、お高いんでしょう?

 

犯人は、神父という絶対に手に入らない人間に恋焦がれています。神父は結婚できないですもんね。対して、アリスは母に愛されるポジションをゲットしましたが、最後には犯人の持ってた血まみれの包丁を奪って観客を見つめてましたから、何かに目覚めちゃったんでしょうねえ……。救われない終わり方ですが、まあこんなジャンルだとこんなもんでしょう。

 

 

★★★★★★☆  6.5/10点

Rotten Tomatoes  83%,61%

IMDb  6.5

ポーラ・E・シェパードはもっと映画界で活躍できたと思うなー。