Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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"冷たい嘘(The Lie)"(2018)

「エイス・グレード」で成長したはずが。

 

公式トレイラー


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Welcome to the Blumhouse作品2本目。人生山あれば谷あり。映画人生も然り、傑作あれば珍作あり。そう、本作は駄作でなく珍作と呼ばせてもらいましょ。あの珍作"ザ・ブック・オブ・ヘンリー"と同じ間違いを犯しているのですから……。"ノクターン"はあんなに面白かったのに……。

 

あらすじ

15歳のケイラの両親は離婚直前。両者ともすでに新しいパートナーを作っており、家族がもう元通りになれないことにケイラは多大なストレスを感じている。ある日、父親のジェイはケイラから、衝動的に友人のブリトニーを橋から突き落とし殺してしまったと打ち明けられる。ジェイは娘の人生を守るため、妻のレベッカにも協力を仰ぎ、ブリトニーの死をひた隠しにしようとする。かくして、崩壊寸前だった家族は再び一つになっていく……。

 

スタッフ・キャスト

監督はサスペンスドラマ"THE KILLING"のヴィーナ・サド。ケイラ役には"死霊館"ジョーイ・キング、ジェイ役には"17歳の肖像"ピーター・サースガードレベッカ役には"ワールド・ウォーZ"のミレイユ・イーノス。

 

 

冒頭、ケイラの幼い頃からの成長ビデオが流れます。物心つくくらいの年齢からはジョーイ・キング本人のビデオになりますが、ちっさい頃から同じ顔してるんですねえ。クロエ・グレース・モレッツも、マッケンジー・フォイもそうでしたが、若くして完成されすぎ。でも、本作のケイラは15歳らしいんですけど、行動があまりに幼くて感情移入がしづらい。本作の主人公はケイラというよりもケイラの両親で、「自分の娘なのに何考えてるか分からない」というのが大切なギミックの1つなので仕方ないのかもしれませんが、観客が映画に没頭するのを妨げています。友だちを突き落として殺したと言ってるくせに、ちょっと経つと普通にテレビ見てたり、あっけらかんと「お腹減ったー」と言ったりします。両親が良心を捨ててまで娘第一でやってるのに、当の本人が一番緊張感なし。大人がちょっと怒ると感情的に喚き散らしたり、子どもぶって泣くし。無邪気といえば聞こえは良いですが、もはやサイコ。でもサイコにしては家族大好きっぽい(それにしては気遣いがあまりにもなさすぎるけど)。よく分からないキャラクターで、いくらジョーイ・キングが可愛いからといっても、あまりにも応援する気になれません。こういう極端な例を見ると、外見至上主義がバカらしく思えますね(笑)。


シリアスな感じで話は進みますが、たまに笑わせたいのかなってな間抜けな絵面が出てきます(笑)。事件の後にケイラが泡だらけの湯船に浸かって顔だけ見えてたり、イライラしたジェイが車でデスメタルみたいの聴いて歩行者から白い目で見られたり。このジェイの場面なんか、"恐怖のセンセイ"でまんま同じシーンありましたよ! 後、関係ないけど、レベッカの友だちでケンジ刑事という女性が出てきます。多分韓国系の女優が演じてますが、フルネームがケンジ・タガタ。日本語でケンジ刑事というと韻を踏んでるのは置いとくとして(笑)、名前の感じからすると日系の役っぽいですよねえ。でも女性でケンジはないわな。パッツィ・ケンジットくらいだろ(笑)。ってそれ苗字だし。

両親が真相を隠そうとする計画もけっこうずさんだし、ジェイは現場に落ちてたブリトニーの財布を処分してません。案の定第三者に見つかります。おい! コメディの"ディック・ロングはなぜ死んだのか?"もそんなテイストだったぞ!

 

ミレイユ・イーノス出演作はおそらく初めて観ましたが、この人ナオミ・ワッツに似てますね。はて。本作に何か似てる映画が前にあったような……。ナオミ・ワッツが出てた、"ザ・ブック・オブ・ヘンリー"! 個人的意見ですが、あれもブラックコメディに徹するべきだったのに、シリアスにしてしかも感動まで狙っちゃった、恐ろしく味付けを間違ってる珍作でした。本作も同じような味がする。

 

レベッカが悪夢でブリトニーの死体を見ますが、実際に死体の映像が映ることはありません。なので、早い段階で真相に気づく観客もいるでしょう。結局、ブリトニーは普通に生きてました。突き落とした云々はケイラと共犯の狂言。どうりでケイラは緊張感なかったんですな。でもね、それが分かる直前に、両親は「ケイラがブリトニーを殺したのでは」と疑ったブリトニーパパを殺しちゃうんですよ。それから、ひょっこり彼氏とランデヴーしてただけのブリトニーがネタばらしに現れる。これ、どう考えても悲喜劇じゃないですか。全てはムダだったわけです。シニカルな話ですよね。"バリー・リンドン"みたいなもんですよ。実際、ブリトニーが現れた時にピーター・サースガードが2回瞬きをします。パチパチっと。あまりにコントみたいな演技なんで、ここはやはり意識的にコメディ感狙ってるのかなとも思いますが、いかんせんシリアスな空気が充満したまま。笑って良いのか真面目なのか分からん。悲しい音楽流れてるし。ケイラの「犯行」を隠そうと奔走してる間に両親が昔のように笑い合ったりしていたので、それが嬉しくてケイラは真実を中々言い出せなかったそうですよ。はあ、そうなんですか。実際ケイラは両親の仲が破綻してからリストカットをしているし、味付けちゃんとすれば切なくて笑えて気まずい映画になったと思うんですけどねえ。いや、気まずい映画にはなってるな(笑)。本作はドイツ映画"Wir Monster"のリメイクだそうですが、本家はどんな感じなんですかね。IMDbにはそっちもコメディとは書いてませんが……。本作のケイラにあたるキャラクターはJanina Frauzという女優が演じたようですが、ジョーイ・キングのようにあどけない感じの容姿ですね。どうやら、そっちもケイラと同じくらいの年齢の設定っぽい。オリジナルは上手くやってるんでしょうか。Rotten Tomatoesに批評家スコアが出ていないので、評価が良いのかどうなのかは分からず。

 

似たテーマの、"少年は残酷な弓を射る"なんて映画もありましたね。昔観たので、不快な話だということもあり面白さが分かりませんでしたが、自分の子どもといえど他人であり、心の内は分からないし、親からの躾だけで子どもの行動を完全にコントロールすることはできないというのは実際にある問題です。「子どもがとんでもないことをしでかしてしまったら」というテーマは非常にホラー・スリラー向けの題材とは思うんですが、だったらもっと両親の策は巧妙にした方が良いよね。シリアスにやるのならね。しょうもない策ならブラックコメディにした方が良い。この致命的な味付けのミスは、砂糖と塩を間違えてるようなもんよ。

 

"エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ"の主人公もケイラという名前でしたね。エイス・グレード(日本の中2と同じだが、アメリカでは中学(middle school)最終学年)の時にちゃんと成長したはずが、今回のケイラは15歳、ナインス・グレード(日本の中3と同じだが、アメリカだともう高校生)なのに精神的に幼すぎ。ストレスから幼児退行したのか……(笑)? なんてね。おめでとう。無事に今年ワースト候補入りです(笑)。

 

 

★★★★  4/10点

Rotten Tomatoes  43%,33%

IMDb  5.8

「冷たい嘘」ね。確かに凍ったように冷たいね。スベってるもんね。