Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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Heiro辞典(第3版)

Heiro辞典改訂。

 

[トーマサイン・マッケンジー問題]

日本において、Thomasin McKenzieを「トーマサイン・マッケンジー」と表記しているのが多く散見される問題のこと。

以下の記事の終盤で少しばかり問題提起しているが、現在起こっている事態は到底看過できないものと思われたので、再度取り上げる。

 

Thomasin McKenzieは、近年急激にその活躍を見ることが増えた、まさにプロミシング・ヤング・ウーマン(=将来有望な若き女性)な女優である。彼女は、デブラ・グラニック"足跡はかき消して"で、自身が出演した映画作品の中で初めての主役を務め大きく評価された。同作はRotten Tomatoesにて、レビュアー数237人にして未だに批評家スコア100%フレッシュという驚異的な数字を保っており、2018年で最も評価された作品と言っても過言ではない。(ちなみに、2017年で同程度に評価されているのはレビュアー244人で100%フレッシュの"パディントン2"。しかし同年の"レディ・バード"はレビュアー394人で99%フレッシュ(ロッテン評価は4人)とさらに高評価。上には上がいるものだ)

その後はよりメジャーなタイカ・ワイティティ"ジョジョ・ラビット"に出演し、多くの観客の目に触れた。現在ポストプロダクション中のエドガー・ライト"Last Night in Soho"M・ナイト・シャマラン"Old"にも出演しており、両作品は確実に日本公開も予想されるので、今後は日本での認知度もさらに上がっていくだろう。

 

彼女の名前が最初にどの形で日本で紹介されたかはっきりしないが、今日でも「トーマサイン・マッケンジー」と表記されることが多々ある。Thomasinは「トーマシン」か「トマシン」と表記する方が正確な発音に近く、「トーマサイン」とはまず発音しない。日本で外国人の名前を呼ぶ際、正確な発音よりもスペルから受けるローマ字読み的な印象に引きずられる場合が往々にしてあるが、そのように呼ぶとしてもやはり「トーマシン」「トマシン」となろう。近い綴りのThomasineという名もあるが、その発音もやはり「トーマシン」「トマシン」である。1億歩譲って仮にThomasineの読みが「トーマサイン」だったとしても、それはThomasineという名でないThomasin McKenzieとは当然関係のないことである。そもそも、原語で「トーマサイン」と発音する一般的な名前はないと思われる。「トーマサイン」の出現は突如上空に現れた未確認飛行物体レベルで説明がつかないが、日本で他に有名なThomasinという名の女優がいないため、一度誤った形で紹介されたその名が広まってしまったのだろう。皮肉にも、「トーマサイン」と言えば、少なくとも今の日本においては、それはThomasin McKenzie以外を意味しない。ThomasinはThomasの女性形の名である。短縮形には「Tom(トム)」がある(ちなみに"足跡はかき消して"のThomasin McKenzieの役名もTom)が、「トム」と言った場合は「ハンクス」「クルーズ」「ハーディ」など様々な選択肢が考えられるのを考慮すると、固有名詞として実に「便利」な力を得てしまっていると言えよう。中々に面倒で由々しき事態である。「トーマシン・マッケンジー」で検索すると最も多い9千件強がヒットするのが不幸中の幸いだが、「トーマサイン・マッケンジー」でもその半数近い5千件ほどがヒットしてしまう。それに対して、「トーマシン」の表記揺れである「トマシン・マッケンジー」では千件もヒットしない。ユニークな可憐さを持つ女優だけに、「独自」の名で呼ばれているこの現象は興味深くはあるものの、正しい名で有名になることを強く願う。


 

Heiroとしては、響きが可愛いので「トマシン・マッケンジー」と呼ぶことにしています。

この件、皆もよろしく!(笑)