Heiroのシネマ・ミュージックフロンティア

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"ズーム/見えない参加者(Host)"(2020) Review!

「誕生」は喜ばしいこととは限らない。

 

公式トレイラー


ズーム/見えない参加者:予告編

 

皆さん"アンフレンデッド"観ました? "search/サーチ"とか。もし観てたら、本作ではそこまでビックリしないかもしれないけど、コロナ禍の中でここまでのもの作れるのはホント驚きです。テーマも今に響くものになってると思います。鑑賞料金1000円っていうのも良いですね。

 

あらすじ

ロックダウン中のイギリス。ヘイリーは友人らを誘ってZoom交霊会を行うが、思いもよらない怪現象に襲われる。

 

キャスト・スタッフ

監督は"Strings"に続く本作が2作目のロブ・サヴェッジ。

ヘイリー・ビショップ、ジェマ・ムーア、エマ・ルイーズ・ウェブ、ラディーナ・ドランドヴァ、キャロライン・ウォードなどが出演(キャストは皆無名で、主演と言える人もいない。強いて言うならヘイリー・ビショップ主演)。

 

 

現在、Rotten Tomatoesで批評家スコア100%(レビュアー80人)の高評価を誇るホラー映画です。そのデータをもって去年ベストホラーなんて言われてたりします。Shudderという、ホラー作品に特化したアメリカの配信サービスによって作られた作品です。ホラーに特化した配信サービスって……何て夢のある話。一応日本にも似たようなサービスでOSOREZONE(オソレゾーン)ってのがあるんですよね。入会してませんが、そこでのみ観れる作品があるなら考えても良いかも……と思って調べたら、何とマリオ・バーヴァ作品とか入ってるじゃないですか!! 中々TSUTAYAとかにも置いてなかったりしますからね。しかも月額たった500円って……これはアリかもな!!!

 

本作は完全にコロナ過の下で作られた作品です。去年"アングスト/不安"が公開された頃、どこかのサイトで同作の監督ジェラルド・カーグルのこういう発言を見た気がします。「日本で公開されるのは嬉しいけど、何でこのコロナの状況でこんな作品公開するの(笑)?」 確かにな! ……と一般人は思うでしょう。しかし我々ホラー愛好家は違う! トマトジュースの代わりに生き血啜ってるような人たちですからね……(違う)。ホラーが血肉になる人種もいるのでございます。

 

 

本作では役者陣は皆実名で出ております。子どもの場合は子どもが混乱しないよう役名を実名と同じにしたりしますけどね。それでZoomで会話してるもんだから、そりゃもうリアルです。ランニングタイムが1時間もないのに、すぐに交霊会が始まらないのは驚きました。皆の準備が整うまでの時間で、少しずつキャラ描写と伏線仕込みをしていくんですね。皆が集まると、ヘイリーが言い出しっぺとなって、セイラン(この人も実名)という霊媒師?の助けを借りながら、友だち同士でのZoom交霊会が始まります。「中国語しか喋れなかった祖父ともコミュニケーションできるか」とか「死んだペットとも話せるか」などの興味深い質問に、セイランは「アストラル界では言語を必要としないから大丈夫」とパワーワードで答えます。まあ対人コミュニケーションにおいて大半を占めるのは非言語的なものだって言いますしね(違う)。アストラル界が何かは知りませんが、たぶん日本語で言う霊界みたいなものでしょう。「霊には敬意を払って」とか、「笑いはエネルギーなので霊を吸い寄せる」とか、それっぽい説明がされるのも面白いところです。

 

交霊会が進むにつれ、何者かに触られた気がするとかラップ音とか奇妙な現象が起こり始めます。"ヘレディタリー/継承"ルカ・グァダニーノ"サスペリア"に出てきたような不思議な光が画面に映り込んだりとかも。こちらにコンタクトを取ってきている何者かについては、頭に名前が浮かんでくるはずだとセイラン。ジェマが、昔首吊り自殺してしまったジャックという人物ではないかと話しますが、後にそれがジェマの嘘だということが分かります。そして架空の存在が具現化してしまいます。

この設定が特に面白いと思ったところです。ありそうっちゃありそうですが、どんな作品があったか思い出せません。日本人には、古い道具に精霊などが宿るという付喪神の概念がなじみ深いところですが、本作では少しの悪意に魂が宿ります。そこが"アンフレンデッド"と違いますね。あっちは分かりやすくイジメによって自殺した者の怨霊でしたけど、本作の「悪霊」の方が得体が知れません。現代社会でも、でっち上げのデマや陰謀論がいつの間にか、空虚でありながら巨大な存在となって社会に蔓延していますからね。新たな恐怖のアイコンとして、これはフレッシュかもしれません。

あ、でもHeiroが見逃しただけで、本当は実在した何者かの悪霊だったのかも? ジェマの嘘によってその「場所」が提供されてしまったみたいなことをセイランが言ってた気もする……。漫画"xxxHOLiC"の中でコックリさんみたいなものとして「エンゼルさん」なる遊びが出てきます。その中では、霊を呼ぶのに失敗した子たちの、「本当に人が死ぬなどの面白いことが起これば良いのに」という悪気のない悪意の山が怪現象を起こします。そっちのセンだとしても、やはり本作は不気味な話です。ジェマの嘘をなぞるように、首を吊った男らしき人影や、テッドが死ぬ前に首吊りのヒモがチラッと映ったりしますし。

 

本作はモキュメンタリーのファウンド・フッテージもので、登場人物がカメラではなくパソコンを持ってのPOV演出もあります。ファウンド・フッテージものの最大の弱点は、「何でいつまでもカメラ回してんだ」問題ですよね。悪霊とかモンスターとかディザスターとかに襲われながらも戦場カメラマンばりのガッツで現場を撮り続ける根性には脱帽ですが、やはり製作者の存在がチラついてしまいます。本作でも、パソコンなんて重い物を持って登場人物が右往左往しますが、先述した問題は解消されています。なぜって、Zoomの性質上パソコンを携帯しないのは仲間とはぐれるのと同義だからです。本作で交霊会終了の手続きを踏んでも怪現象は止みませんでしたから、Zoomから離脱して助かる保証もないですし、部屋で独りぼっちになるだけです。普通のファウンド・フッテージものでは登場人物は仲間と常にともに行動しますが、はぐれたら大体そいつは死にます。まあ、面白いことが起こっている画面がクローズアップされるとこはやはり作為的には見えますが……しょうがないよね(笑)。

 

HeiroはZoom弱者なんで、実際どこまでのことがZoomでできるのかイマイチ分からないことが鑑賞にプラスに働きました。キャロラインが普段の自分の動画を背景にしていたせいで死にかけているのが露見しないところとかね。エマの舌ペロペロフィルターは怖いというかキモかったですけど、ガチでマズい状況でもペロペロ発動してKYすぎてちょっと笑いましたが、イギリスらしいブラックジョークと捉えて良いんでしょうかね(笑)。誰もいないはずの空間で顔認証したり、地面にまいた粉に足跡が付いたり、布を被せると実体が現れたりするところも良かったですね(もはや"透明人間"みたいでしたけど)。ちゃんと恐怖シーンではPCのノイズみたいな音が入ってて不気味さを出し、危険が去ったように見えるシーンではノイズが消えるという細かい演出もされていました。緊張と緩和のタイミングも良かったし。ジェマが終盤、ヘイリーを助けに彼女の家に行く時もマスクするし、ヘイリーと会って一瞬脱力して笑いながら肘タッチするとこなんか、繊細な演技ながら従来の映画では見たことない、まさにコロナ過の状況ならではのフレッシュな場面になってましたね。そしてZoomの40分の時間制限ギミック! これはセンス良い! リミットが近づくと画面の端でカウントダウンが始まるんですが、来るぞ来るぞ感がありつつもギリギリまで引っ張って、最後ドカンと来ましたね! まあ、個人的な好みで言えば大きい音と衝撃的な映像でビックリさせるジャンプスケアの手法はあんまり好きじゃないですが、それまでがすごく楽しめたのでそんなに気にならず。登場人物が死ぬごとに画面数が減っていくのもスマートで美しい。エンドクレジットは最初そうだと気づかず、「謎の第三者がPC操作してる!」と思いましたが、Zoomの登録メンバーのリストに見せかけたなんともオシャレな見せ方をしてましたね。

 

本編終了後は10分間くらいの交霊会のリハーサル映像が流れます。「メイキング映像あり」とアナウンスされてましたが、どういう風に恐怖シーンを作ったのかの裏側とかはなくて、本当にキャストとスタッフでの交霊会だけでした。それはメイキングとは言わないのではと思いつつ。大体劇中の交霊会と同じような感じなんですが、セイランの代わりにサムという霊媒師的な人が出てました。この人がホンモノなんでしょうかね。特に画面上では何も起こらないんですが、エマやジェマの周りではちょっとヘンな現象が起こったようです。満足感のある映像かと言われればムムムなんですが(笑)、多分これを元に脚本を書いたのではと思われるので、どのレベルまで引き上げれば鑑賞にたえる映像になるのかという視点で見ると面白いのではないでしょうか。また、ゆるい映像なので、中々怖いホラーの口直しとして観ても悪くないかも(巷では不評の様子だけど)。でも、この映像実は普通にYouTubeで観れます……(笑)。後、画面左上に見た覚えのない美人がいましたが、多分悪霊のせいで空中首ポキされる、テッドの彼女ジニーを演じたジニー・ロフトハウスだと思います。役者陣の中で好きだったのはキャロライン・ウォードですね。とてもキュートでした。

 

こんなこと言うと元も子もないんですが、スクリーンじゃなくて本物のPC画面で観た方が良い映画かもしれませんよね(笑)。どうせ1000円と新作の配信料金みたいな金額だし。

イムループものとかは、すでに映画のいちジャンルとして人気を博しててバリエーションも色々あって「またか」感あんまりないのに、こういう全面PC画面上で進む映画はそれだけで二番煎じ感出ちゃうのはなぜなんだろう。まだそれが手法にすぎず、ストーリーのテーマと密接に直結してないから? 全編PC画面映画というジャンルはまだそんなに本数がないですが、もっともっと伸びしろがあるんじゃないかな。コロナ時代に作られた作品として間違いなく評価に値する一本だと思いますが、これからはさらに面白い作品も出てくるのでは? リハーサル映像でもそうですが、ある意味一番怖いのは画面のフリーズや接続が切れることです。Zoomというツールを通して、「離れてる。でも繋がってる」というコロナ時代を生きる我々への応援ともとれるメッセージを伝えてくれる作品です。割と充実感があって、短さからくる物足りなさも感じませんでした。

 

 

★★★★★★★★  8/10点

Rotten Tomatoes  100%,74%

IMDb  6.6

でも、ネットがなきゃ不安になる現代社会そのものが一番のホラーかも……。